曽祢まさこ「七年目のかぞえ唄@」(1982年9月4日第1刷・11月2日第3刷発行)
曽祢まさこ「七年目のかぞえ唄A」(1982年10月5日第1刷発行)
収録作品
・「七年目のかぞえ唄」(「なかよしデラックス」昭和56年11月号〜昭和57年5月号掲載)
「サミエル(サミィ)=メイズは、セシリー=フェアブラウンが家に帰ってくると、セシリーの継母のポーラから聞く。
セシリーはサミィよりも一歳半年上で、母親が従姉妹という遠い親戚であったが、大の仲良しであった。
セシリーの母親は早くに亡くなり、彼女が七歳の時、父親は秘書のポーラと結婚。
新しい母親ができたことにセシリーは大喜びするが、その幸せは長くは続かず、父親が飛行機事故で急逝。
悪いことは重なるもので、ポーラは急病に倒れ、その隙に、財産目当ての親戚達は、セシリーに、ポーラが父親を殺したと嘘を吹き込む。
父親の死とその作り話に精神的ショックを受けたセシリーは心を閉ざし、更に、ある事故をきっかけに、結核に身体を蝕まれていることが判明。
セシリーは七年間の療養所生活を送ることとなる。
ポーラの献身的な介護もあってか、セシリーは元の明るさを取り戻すまでに回復。
元の家で生活を再開するが、どうも自分の住んでいた部屋に不安を感じて仕方がない。
その部屋は、七年前、限りない悲痛と、ポーラへの怒りを胸に抱えて、夜には悪夢に苛まされた記憶を容赦なく彼女に呼び覚ます。
セシリーがその部屋の扉を開けた時、七年前にセシリーの感じた絶望や怒りが、その頃の少女の形をとって、解き放たれる。
そのセシリーの影は、ポーラにことあるごとに危害を加えようと目論む。
サミィと彼の兄、ルーサーは、心霊学的なアプローチにより、セシリーとポーラを助けようとするのだが…」
・「金のベールに銀の糸」(A収録/「なかよし」昭和56年8月号掲載)
「遠い昔、北の海の向こうの、若い王様の治める、平和な国の物語。
城から離れた小さな町に、没落しつつある旧家があり、そこには美しい姉妹がいた。
姉のエレミア(18歳)はお淑やかな落ち着いた娘、対照的に、妹のリアンダ(15歳)は若干行儀悪くはあるが、活発な娘であった。
ある日、姉妹は王様から城に招かれる。
王様は二年前に妃を亡くしており、再婚相手の候補として、姉妹を呼んだのであった。
噂以上の姉妹の美しさに王様は息を飲む。
彼は姉妹のどちらを妃にするか迷うが、妃となれば国政の一端を担う身となるため、思慮深いエレミアを選ぶ。
姉が妃に選ばれたことを知り、リアンダは表面では祝福するものの、落胆に沈む。
宝石も衣類も今まで憧れていたものは全て色褪せ、彼女が望むものは王様ただ一人。
そして、迎えた夏至祭。
離宮の近くの月の丘で、姉妹が揃うと、その美しさに光り輝くよう。
しかし、リアンダは、姉の美しさにひそかに嫉妬の炎を燃やす。
姉妹が喧騒から離れ、湖の畔で話をしている時、ふとしたことから姉のエレミアは湖に転落。
リアンダは助けを求める姉をわざと見捨て、姉の死は不幸な事故とされる。
望み通り、姉に代わって、妃の座を射止めたリアンダであったが、たびたび奇怪な現象に見舞われる。
彼女は姉には負けないと強情を張り、結婚式の日を迎えるのだが…」
「七年目のかぞえ唄」は、オカルト怪奇マンガの名作です。
当時のホラー映画(「ポルターガイスト」「悪魔の棲む家」等)の影響が散見されるのが、時代を感じさせます。
オカルト怪奇マンガではありますが、恐怖描写よりも、人間ドラマの方が遥かに見応えがあり、(怪奇マンガ・ファンとしてはちょっぴり物足りないけれど)読ませます。
あと、ラストはほろ苦いです。
主人公ではなく、その兄がいいとこどりなのは、やはり曽祢まさこ先生の理想のタイプだから?
「金のベールに銀の糸」も有名な作品です。
ラストの残酷描写が、当時の読者の少女達に多大なインパクトを与えた模様です。(曽祢まさこ先生は、実にさりげなくショック描写を織り込んでくれます。)
今現在では、この手の味のある作品は稀少のように思います。かなり新鮮でした。
2017年8月17日 ページ作成・執筆