関よしみ「赤い悪魔の子守歌」(1986年6月4日発行)

 収録作品

・「赤い悪魔の子守歌」(藤本ひとみ原作/「なかよしデラックス」昭和60年7月号〜11月号)
「開発中の小さな町(注1)。
 町長の高橋は町の再建に命を燃やし、レジャーランド開発を進めていた。
 開発の一環として新しく建てられた国立生物研究所のために、この町に引っ越してきた橋本一家。
 引っ越した翌日、開発に反対する老婆が研究所で暴れ、蜘蛛の飼育ケースが破壊されてしまう。
 その中には、熱帯性の食肉グモと在来種の無害だが繁殖力の強い赤グモを交配させた卵があった。
 そのことがあってから、森の中に入った動物達が次々と白骨で見つかるようになる。
 そして、原因不明の白骨化した死体も…」
 時代を考えると、トラウマ・ホラーの大傑作であります。
 やたらにリアルな蜘蛛の描写が無垢な少女達に蜘蛛に対する嫌悪感を心底深く刻み込んだものと思われます。
 かつ、女子供の区別なく犠牲になる描写がそれに拍車をかけます。
 この「徹底さ」が関よしみ先生の持ち味であり、それを引き出した担当者の慧眼に唸らされます。

・「冬木立の目撃者」
「金持ちでありながら、仕事の忙しさにかまける両親に放ったらかしにされている少女、春菜。
 寂しさといじけにより、彼女は不良達と付き合うようになる。
 ある冬の日、彼女が盛り場に向かっていると、酔っ払いの親父に絡まる。
 その親父を突き飛ばしたところに、車が突っ込んできて、計三人が即死する惨事となる。
 路地裏で震えている彼女がこっそり事故現場を覗くと、警察官の質問に一人の老婆が答えていた。
 老婆は、酔っ払いが突然道路に飛び出したと証言していたが、春菜に気づくと、目配せをしてくる。
 翌日、春菜に老婆から電話がかかってくる。
 事故現場前の喫茶店に春菜が向かうと、老婆がそこで待っていた…」

・注1
 舞台は「T県H郡K町」という設定ですが、「芳秋洞」(ソノママ)が出てきます。  孤立した町で事件が起きて云々…と書くと、今だったらバカバカしいと思われるかもしれませんが、山の奥の田舎なんか30年前は道が整備されてなくて、それはそれは行き来が大変だったものです。
 今はバイパスがたくさんできて、交通は非常にスムーズです。インフラって重要ですね。

平成27年3月10・11日 ページ作成・執筆

講談社・リストに戻る

メインページに戻る