さちみりほ「魔女達の輪舞」(1996年6月13日第一刷発行)

 収録作品

・「魔女達の輪舞 act.1」
「奈月麻衣は平凡な中学三年生。
 彼女は繰り返し奇妙な夢を見ていた。
 それは遠い異国の石造りの町で、取り囲む群衆の中、縛られた彼女は斧で首を切断される。
 そして、蒼い目から涙を流しながら、彼女を追う青年…。
 ある日、麻衣は立木の並ぶ通りで、彼の幻を視る。
 友人の沙樹に声をかけられて、気が付くと、彼の姿は消えていた。
 麻衣と沙樹は陸上部であったが、練習熱心な沙樹に引き換え、麻衣は万年雑用係。
 だが、沙樹が練習中にケガをしてしまい、麻衣が代わりに出ることとなる。
 彼女は練習に励むが、自分の無力さを痛感するばかり。
 そんな時、再びあの青年が現れる。
 青年は麻衣を「誰よりもすばらしい女性」と褒め、自信を持つよう励ます。
 そして、彼が姿を消した後には、古びた外国の本が残されていた。
 その後、彼女が練習をしていると、左足が猛烈に痛くなる。
 更に、保健室で休んでいると、犬のようなモンスターに襲われる。
 そこにあの青年が助けに来て、彼女が本をかざすと、モンスターは消える。
 あのモンスターは「スーリム」という「人の怨念を食べる者」で、麻衣のことを殺したいほど、憎んでいる人がいるというのだが…」

・「魔女達の輪舞 act.2」
「麻衣は高校に進学し、沙樹とは別のクラスになる。
 そのクラスで、麻衣は野田という女子生徒の近くになり、気が付けば、そのグループに入っていた。
 グループの中には仁科という大人しい少女がいて、彼女も麻衣と同じく、気後れするタイプであった。
 クラスは野田と佐々木の派閥に分かれ、仁科は野田をさかんによいしょする。
 と言うのも、彼女は中学校時代にずっといじめを受けていたからであった。
 だが、露骨なへつらいが逆に反感を呼び、仁科は仲間外れにされる。
 麻衣は彼女と仲良くしようとするが、彼女に突き飛ばされ、結局、クラスで孤立。
 そんな時、気を落ち着けようと、あの古い本を取り出すと、中のページに仁科が映る。
 彼女は、よく当たると評判の「パガルの家」の占い師のところにいた。
 占い師は彼女はずっと不幸で孤独という運命だが、身代わりを捧げれば、その運命から逃れられると告げる。
 放課後、麻衣は仁科に屋上へ呼び出される…」

・「魔女達の輪舞 act.3」
「鏡見は麻衣の同級生。
 彼女は根暗で、しょっちゅう自分の前世の話ばかりしていた。
 彼女達は新歓オリエンテーションの一環で、ピクニックに出かけることとなる。
 同じ班になった武居という男子は女子に人気があり、鏡見も想いを寄せていた。
 だが、違う班の茂手木が勝手に入り込んで、武居にいちゃいちゃして、鏡見はストレスをためる。
 彼らが進むうちに霧が出てきて、更に、他の班とはぐれてしまう。
 メンバーがパニックを起こした時、麻衣と鏡見は突き飛ばされ、崖下に転落。
 その時、鏡見は麻衣の持ってきた本を手に入れる。
 以来、彼女は全てが思い通りになり、人を思うままに操り、今まで自分をいじめてきた連中は皆、抹殺する。
 ただ一人、言いなりにならないのは麻衣で、彼女は鏡見の背後に一つ目の豹のような「アシャール」の姿を見る。
 麻衣は一度はユージィンに助けられるものの、本を取り返すため、単身、鏡見に会いに行く…」

・「マスケーラ」
「20世紀初頭、ヴェネチア。
 名門ロッセリーニ家の令嬢、イザベッラと乳母の娘、ソフィア。
 二人は乳姉妹として光と影のようにいつも一緒に育つ。
 イザベッラは父親の寵愛を受けて、花のように美しくなる一方、ソフィアは日々、使用人の娘として身分の違いを思い知らされる。
 ソフィアの母親は屋敷の隅の一室にずっと寝たきりで、旦那様に感謝するよう、ただそれだけを繰り返す。
 二人が年頃になった時、アスラン・ヴェルディ子爵が邸を訪れる。
 彼はフランス貴族の血筋で、絵本で見る王子様のように気品ある青年であった。
 イザベッラは彼と婚約し、ソフィアの初恋は無残に砕け散る。
 更に、母親が亡くなり、ソフィアは自分の父親がイザベッラの父親であったことを知る。
 だが、父親は母親の葬儀にはろくに顔を出そうとしなかった。
 ソフィアは自分の境遇を呪い、自分の父親を、そして、イザベッラを呪う。
 ある日、ソフィアは失踪する。
 謝肉祭の日、彼女はマスクで顔を隠して、イザベッラの前に姿を現すのだが…。
 ソフィアの陰謀の行きつく果ては…?」

・「さちみの恐怖体験」
「さちみ先生の友人が見た夢に関する話。
 知らない学校で、知らない制服を着て、彼女は校舎の屋上から落ちそうになっている。
 必死で手すりを掴んでいるが、彼女の足を見知らぬ女子生徒が握っている。
 彼女は助かろうと、その女子生徒を突き落とす。
 だが、夢を繰り返し見るにつれ、その女子生徒は徐々に彼女の身体を這いあがってきて…」

 魔女の転生である女子高生がヒロインの「魔女達の輪舞」は、後書きによると、1991年頃、ある雑誌の創刊号に掲載されたものの、二話目でその雑誌が廃刊になり、1994年にこれまた別の雑誌にリメイクを連載するも、今度は三話で打ち切りになったとのことです。(恐らく、単行本に収録されているのはリメイク版。)
 いろいろと謎が残されたままですが、続編は描かれてのでありましょうか?
 あと、「さちみの恐怖体験」で語られる話はかなり怖いです。

2023年3月4・26日 ページ作成・執筆

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