わたなべまさこ「モナリザの部屋」(1988年8月12日第一刷発行)

 収録作品

・「モナリザの部屋」
「冬のスウェーデン。
 休暇を狩猟で過ごす、精神科医のビンセント・ミネリはシブッナ湖の近くで少女を誤射する。
 幸い、弾は左腕をかすっただけで、ビンセントは少女を自分の小屋に連れ帰り、手当てを施す。
 ジョアナと名乗る少女は、死への憧憬と、父親に対する愛情について話す。
 暖炉のそばで、ビンセントがうとうとしているうちに、少女の姿はいつの間にか消す。
 翌朝、湖の畔にあるスコークラスター城からビンセントに招待状が届く。
 スコークラスター城の持ち主は、アンブローズ・ドゥ・クラスター将軍であった。
 その城で、ビンセントはクラスター将軍の一人娘、モナリザと会うが、彼女はジョアナとそっくりであった。
 しかし、モナリザは昨夜のことは全く覚えていない。
 ビンセントは自分の勘違いかと思うものの、クラスター将軍はジョアナの名を聞いた途端、顔色を変える。
 そして、ビンセントはクラスター城の秘密の数々を知ることとなる。
 父親に異常な愛情を燃やすモナリザ。
 実子であるのに、召使の子供と思い込み、モナリザに憎悪を燃やす母親、カミラ。
 カミラに取り入り、クラスター将軍の後妻の後釜を狙う家庭教師、コーバン。
 14年前、モナリザが赤ん坊の時の、悲惨な心中事件。
 そんな愛憎渦巻く中、モナリザの憎悪が高まる時、双子の姉、ジョアナが顔を出し、悲劇が起こる…」
 「二重人格」ものの名作です。
 古風な少女マンガ風の絵柄ですが、中身はとてつもなくドロドロしていて、唸らされます。
 ただ、若干、整合性を欠いた部分があるのが残念。
 モナリザの胸の傷についてや、コーバンの死体がゾンビ化したことについて、はっきりとした説明はありません。
 幽霊譚の要素を除いて、「二重人格」だけでいけば、もっとすっきりしたのかもしれません。
 でも、まあ、わたなべまさこ先生は「怪談」が大好きみたいなので、どうしても幽霊を登場させたかったんでしょうね。

・「おじさまにキスを…」
「リザは両親を亡くし、ドロシー叔母の世話になっていた。
 だが、17歳になれば、父親の遺産を相続できる身。
 あと一月で17歳になるというある日、リザのもとにジェームズ叔父から手紙が届く。
 ジェームズ叔父は五年前に駆け落ちをして、カリフォルニアで亡くなっていたはずであった。
 手紙にはリザと会いたいと書かれていたが、以来、リザの周囲でおかしなことが起こり始める…」

 「モナリザの部屋」は若木書房のティーン・コミックス・デラックスからの再録ですが、小粒なサスペンス作品「おじさまにキスを…」に併録作品が変更されております。
 「死人契約」がエグ過ぎたためではないでしょうか?

2017年1月30日 ページ作成・執筆
2017年10月19日 加筆訂正

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