わたなべまさこ「花のようなリリベット」(1984年7月14日第一刷発行)

 収録作品

・「花のようなリリベット」(週刊「少女フレンド」連載)
「スイスにある私立のミッション・スクール、アレキサンドル学院。
 両親を亡くしたエンジェル=ウィンターは、転入してきたリリベットという少女に心奪われる。
 その美しさもさるものながら、彼女はエンジェルが度々見る悪夢に出てくる少女と瓜二つであった。
 そのうちに、学院では奇妙な事件が続発。
 エンジェルと同室のアガサは生気をすっかり欠き、メアリーという女生徒が怪死を遂げる。
 エンジェルも奇怪な目に遭い、倒れてしまうが、彼女をリリベットが見舞う。
 リベットはエンジェルに「愛し合い」「いっしょにいられる」ようになるため、その夜、自分のベッドに来るよう誘う。
 しかし、リリベットが吸血鬼であることを知ったカラード医師により、エンジェルはオーストリアにある祖父宅に無理矢理連れて行かれる。
 エンジェルの祖父、医師、牧師は、リリベットがエンジェルを自らの後継者にすることを阻止しようとするのだが…」
 吸血鬼を扱った怪奇マンガの名作です。
 グロ描写・残酷描写は当時としてはかなりきつく、「聖ロザリンド」で大暴れをした、わたなべまさこ先生の面目躍如って感じです。
 また、大胆にも「レズビアニズム」の要素もありまして、リアルタイムで読んでいた少女達はドキドキしたかも…。
 この点から考えると、レ・ファニュ「吸血鬼カーミラ」に触発されて描かれたマンガなのかもしれません。

・「水藻のゆりかご」(週刊「マーガレット」掲載)
「山間の茶屋。
 夜の九時に、一人の女が哺乳瓶にミルクをもらいに、茶屋を訪れる。
 茶屋の老夫婦は愛想よくミルクを渡すが、気が付くと、女の姿はどこにもない。
 次の夜も同じ時間に、女がミルクをもらいにやって来る。
 茶屋の老人が女の後をつけていくと、女は谷底へ降りていく。
 老人が訝っていると、どこからか赤ん坊の泣き声が聞こえてくる…」
 芸者を扱ったドロドロしたマンガなのかと思いきや、突如、「飴買い幽霊」になっております。
 こんな小話にも「大人の世界」を捩じ込むのは、やはり、わたなべまさこ先生の「心意気」なのでありましょう。

・「青ざめたディオンヌ」(月刊「セブンティーン」掲載)
「シムノン公爵夫人の一人息子、レオポルド。
 彼は領地の森で出会ったディオンヌと激しく愛し合う。
 しかし、ディオンヌは人間ではなく、以前、レオポルドに命を救われた大蛇であった。
 ディオンヌは人間の姿を維持するために、心苦しいながらも、レオポルドの首から血を吸う。
 レオポルドの衰弱に加え、このままでは許嫁との結婚にまで響くと考えた公爵夫人は、執事に様子を探らせ、ディオンヌの正体を知る。
 公爵夫人はレオポルドにディオンヌとの結婚を許し、ディオンヌに花嫁衣裳を送る。
 だが、それは公爵夫人の罠であった…」
 蛇の化身との恋愛譚です。
 似たような内容のマンガを描いている、さがみゆき先生が和風テイストなのに対して、わたなべまさこ先生はどこまでも「西洋を舞台にした少女マンガ」です。
 でも、さすがに「まつ毛の長い蛇」には笑っちゃいました、すんません…。(まつ毛もあれば、まぶたもあります。)
 いやはや、わたなべまさこ先生の筆による、キモかわいいディオンヌを見逃すな!!
 ちなみに、このディオンヌとレオポルド、ヤッてます。

 若木書房のティーン・コミックス・デラックスからの再録です。

2017年1月22日 ページ作成・執筆

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