松本千秋「砂炎幻想」(1989年1月13日第一刷発行)

 収録作品

・「SHADOW」
「サディアスは勤勉・生真面目で、優等生を絵に描いたような青年であった。
 活発な青年、アレクは、ふとしたきっかけから、彼に興味を持つ。
 サディアスは口数が少なく、どこか謎めいたところがあった。
 初夏、サディアスは、父親の死の報せを受け、家へ戻る。
 だが、学校には戻らず、退学届を出したと聞き、アレクは、夏休みを利用して、サディアスの家があるミッドランズを訪れる。
 サディアスは彼を歓迎するが、大叔母をはじめとする親戚連中はいい顔をしない。
 彼らは「おかしくなった母親の血を引く」サディアスが遺産を相続するのに一応に反対であった。
 アレクが邸に到着した翌日、大叔母が就寝中に心臓発作で亡くなっているのが発見される。
 それを皮きりに、サディアスを敵視する親戚達が次々と亡くなっていく。
 また、アレクもある夜、ベッドの上に現れた少女に襲われるという体験をする。
 アレクには「サラ」という名の妹がいるようなのだが…」

・「砂炎幻想」
「新進画家の薫がひょっこり家に帰ってくる。
 彼は、交通事故死した父親の法事が済むとすぐにタクラマカン砂漠へ旅立ち、三か月もの間、音信不通であった。
 この旅行は本来、画家だった父親と一緒に行くはずで、父親の方が熱心だったらしい。
 いとこのユキヒロと比佐子は彼に会いに行くが、父親の描いた「飛天」という絵を目にすると、薫は顔色を変える。
 その絵には天女が描かれていた。
 薫はその女性を絵に描き始めるのだが、比佐子は敏感に彼の様子がおかしいことに気付く。
 「夢見る砂漠」に捕まった薫の運命は…?」

・「SOMNIUM(ソムニウム)」
「長野県。
 朔也は夏の合宿が終わった後、友人の村瀬と共に、生まれ故郷の町に寄る。
 かつて彼が住んでいた家は、今は叔父夫婦が暮らしており、彼らはそこに滞在することとなる。
 長い間、朔也はそこに戻っていなかったが、そこにはある思い出があった。
 彼が少年の頃、安曇という少女と出会う。
 その少女は、両親の死後、いろいろとつらい目にあい、心を閉ざしていた。
 短い付き合いの後、彼女は専門的な治療をするために、町の病院へ行くこととなり、彼は再会を約束する。
 しかし、その約束を果たす前に、彼は引っ越ししてしまい、以来、彼女に会うことはなかった。
 その思い出に浸る彼の前に、あの頃の安曇の姿が陽炎のように現れる。
 そして、安曇と最初に出会った沼で、彼が見たものは…」

2020年9月18・21日 ページ作成・執筆

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