渡千枝「死の砂迷宮」(1997年1月13日第一刷発行)

 収録作品

・「幽霊たちの舞踏会」(「別フレDXジュリエット 1985年1月号」掲載)
「ブラックモア夫人の住む屋敷は、幽霊屋敷として有名であった。
 高齢の夫人が屋敷を売りに出すと、三つの観光会社が名乗りを上げ、三人の代表者が一週間滞在した後、競売にかけられることとなる。
 それに顧問弁護士が立ち会う予定であったが、彼は足にケガをして、妹のロビンと、彼を介抱してくれた青年、ウォルター=ルーレックスが代わりに屋敷を訪れる。
 屋敷に滞在するのは、二人の他に、ブラックモア夫人、霊感持ちの女中のターナー、観光会社の代理人であるベイカー、ジョーンズ、パーマー。
 早速、屋敷はポルターガイスト現象で彼らを迎えてくれるが、ウォルターは幽霊の存在を決して認めようとはしない。
 その夜、ブラックモア夫人が、鏡の破片が身体中に突き刺さった死体で発見される。
 しかし、彼女の部屋は密室で、出入り口になりそうなのは、天井近くのわずかに開いた通風口のみ。
 警察に連絡しようとするも、電話は通じず、屋敷のある島に通じる吊り橋は何者かによって落とされていた。
 翌日、夫人の遺体が消え、殺人の痕跡もなくなってしまう。
 幽霊の仕業なのか、それとも、中の誰かの仕業なのか、疑心暗鬼のうちに、一人また一人とおかしくなったり、失踪していく。
 ロビンは、ブラックモア夫人の行方不明の孫息子、ジェフリーがこの事件と関連があるのではないかと考えるのだが…」

・「二人だけのイエスタデイ」(「別フレDXジュリエット 1985年11月号」掲載)
「S県、海の近くの小さな町。
 篠崎辰郎は、そこで小さな医院を開いていた。
 ある日、彼のもとに、後輩の中嶋が一人の少女を連れてくる。
 この少女は、八年前に轢き逃げされて亡くなった妻、舞の生まれ変わりであった。
 舞は、彼のことなら何でも知っており、辰郎と仲良くしていた幼馴染の絵里子に対して、猛烈な敵意を示す。
 舞は辰郎と共に暮らし始めるが、何者かに命を狙われるようになる。
 彼女が記憶を完全に取り戻した時、その理由が明らかになる…」

・「死の砂迷宮」(「別フレ増刊ロミオ 1985年初夏の号」掲載)
「浅井均は、悪夢に悩まされていた。
 その悪夢とは、砂漠で遭難中、自動販売機を見つけるが、中は砂だらけで一缶もなく、渇き死ぬというものであった。
 その夢を見るようになったのは、七年前。
 小学生だった彼が蹴とばした空き缶のせいで、女子高生が交通事故死したことにショックを受けたためであった。
 高校生になった頃、彼に、里見充子というガールフレンドができる。
 だが、彼女の姉、有子は、彼の空き缶が原因で交通事故死した女子高生であった。
 以来、彼は、有子の怨霊に悩まされ、憔悴していく。
 心配した充子は、試験休みに、卓球部の連中との山へのキャンプに、彼を誘う。
 気分転換のため、彼はその案に乗るが、キャンプの最中、充子と共に擂鉢状の窪地に転落してしまう。
 地獄のような熱気の中、均はあの夢を思い起こすのだが…」

2022年12月5日 ページ作成・執筆

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