犬木加奈子「不思議のたたりちゃんA」(1993年12月13日第1刷・1995年3月5日第5刷発行)

・「その1 たたりちゃんがやってきた」
「4月8日(木) 新学期」
 二年生になった神野多々里。
 またヨッちゃんと同じクラス、今度こそ友達ができるかな…。
「4月9日(金) タンポポがいっぱい」
 クラスの美化委員に選ばれた多々里。
 クラス花壇は荒れ放題で、多々里は一人で草むしり。
 その最中に、外来植物に押されて、数を減らしている日本タンポポを見つける。
 日本タンポポに自分と同じ境遇を見た多々里は花壇を日本タンポポでいっぱいにしようと考える。
 しかし、「花壇コンテスト」が開かれることとなり…。

・「その2 蝶よ美しく舞い上がれ」
 5月。
 テニス部の副部長に勧誘され、テニス部に入部することになった多々里。
 しかし、新入部員は多々里一人だけ。
 というのも、テニス部部長、上葉蝶々は美しく、テニスの才能はあるが、わがままで冷酷。
 ワケのわからない練習方法を考え出しては、部員をいびり、副部長以外は皆、テニス部を退部していたのだった。
 上葉蝶々への憧れもあり、しごきにも耐えようと努めるものの、多々里は上葉蝶々の本性に気付く。
 多々里はテニス部の退部を申し出るのだが…。

・「その3 立ちつくす恋」
 6月。
 多々里の机の中に入っていたラブレター。
 それはクラスの女子生徒が、自分のもらったラブレターを多々里の机に入れたものであった。
 イタズラと思いつつも、ラブレターの差出人を待つ多々里を遠くから眺めて、女子生徒三人はある悪だくみを抱く。
 それは偽のラブレターで多々里を呼び出し、かかしをラブレターの差出人に見せかけるというものであった。  それをすっかり真に受けた多々里は一時ながら夢のような日々を過ごすが…。

・「その4 傘がない」
 7月。
 いつも傘を盗まれてばかりの多々里。
 彼女は物置の中から小学校の頃に使っていた古傘を見つける。
 この古傘は不思議な力があり、他人に持ち帰られても、いつの間にか自分のもとに戻ってくる。
 親近感を感じた多々里は、この傘に「カサカサ」と名前を付け、友達のように扱う。
 だが、この傘に関して、多々里に逆恨みを持つサバ子が、多々里の持ち物をダストシュートにこっそり捨て始める…。

・「その5 もう一人の…さん」
「7月。
 冷酷で情け容赦のない、ユウ子の主導によって、クラス全員から「幽霊」扱いされる多々里。
 無視されるだけならともかく、存在まで否定されたことへ「たたり」が発動。
 ユウ子は学校の怪談に出てくる「レイ子さん」と出会うこととなる…。

・「その6 マジックミラー」
 8月。
 すっかりスポイルされ、自分の思い通りにならなければ、癇癪を起しまくる、自己中心的ななアタリ。
 偶然に道端で出会った多々里は、アタリに遊園地へと付き合わされる破目になる。
 行儀作法も、他人への配慮や同情も欠如したアタリに、多々里はミラーハウスに入るように勧める。
 ミラーハウスで、アタリが出会った人物とは…。

 ナイス・単行本です。
「不思議のたたりちゃん」の魅力は「ユーモア」にも負うところが大きいと思っているのですが、「怪奇」「リアリティー」「ユーモア」のバランスが極めてよく取れているのではないでしょうか?(あと、個人的には、絵柄が内容としっくり合っているように感じます。)
「もう一人の…さん」「マジックミラー」は「たたりちゃん」シリーズの中でも、かなりの好短編。
 また、後のパートナー(なのか?)「乃呂井かける」君や、某「愛のコレクター」と思しき人物が出ているのも、嬉しい限り。
 あちらこちらに発見があり、楽しい一冊です。

2016年4月15日 ページ作成・執筆

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