犬木加奈子「不思議のたたりちゃんF」(1998年6月12日第1刷発行)
「その1 日記は心の友だち」
「小学校に入っても、友達もなく、いじめられる日々。
そんな多々里には、祖父母にもらった日記帳に、友達と楽しく過ごす夢を書き込むことが唯一の楽しみ。
しかし、多々里の後ろ座席のキッ子は、多々里のいない隙に、多々里の日記帳の鍵を壊し、クラスメート達は回し読みをする。
誰にも知られたくない、自分の心の奥を人前にさらされ、多々里はそのことがどれだけ残酷なことがクラスメート達に思い知らす…」
「その2 天才・流石くんの実験」
「自称・天才の流石(さすが)は、他の人間を見下してはばからない。
天才以外はムダな生き物であり、実験や研究に使って当然と、多々里の頭を虫メガネで発火させる。
頭に火がついた多々里はクラスメート達に水を散々ぶっかけられる破目になる。
翌日、多々里はこれが流石の仕業と知り、その天才が如何に卑小なものであるか虫メガネの向こうに現す…」
「その3 お墓の中の通り道」
「下校の際の通り道。
家が近所の鷹理(たかり)とユスリに目をつけられた多々里は、カバン持ちをさせられるは、金をせびり取られるはで、もう散々。
偶然に、多々里は壁に墓地に抜ける穴を発見し、何度か二人をまくことに成功。
しかし、この抜け穴に気付いた鷹理とユスリは腹いせに墓石に落書きをしまくる。
翌日、二人は墓場で多々里を待ち伏せて、乱暴を働くが、二人には「たたり」がしっかり待ち受けていた…」
個人的に、感銘を受けたセリフを(許可を得てはいませんが)引用させていただきます。
「天国や地獄って自分のしてきたことをふり返る場所だと思います。
そこで後悔して苦しむか、せいいっぱい生きたと安心できるのかの違いだと思うんです。」(p59)
深いです…。
「その4 プリンクラブは友だちの証?」
「多々里にペンフレンドの友達ができた。
最新の手紙には、その子が一人で写っているプリンクラブのシールがあり、多々里のシールと半分ずつ合わせようと書かれていた。
勇気を出してプリンクラブを撮った多々里は、そこで満福笑の姿を見かける。
満福笑は、プリンクラブを訪れた少女達と一緒にプリンクラブを撮ることを繰り返し、遂に百人目を達成と悦に入っていた。
しかし、翌日、多々里がペンフレンドに宛てて書いた手紙を見て、満福笑は普段とは比較にならないほどの憎悪を燃やす。
手紙をびりびりに裂かれた多々里は、満福笑の言う「友だち」がどのようなものか彼女に見せつけるのであった…」
「その5 不幸の年賀状」
「冬休み目前。
年賀状を百枚もらうことを目標とする満福笑はクラスメート達に、お互いに年賀状を出すよう提案する。
その中には、多々里も含まれていたが、満福笑にはある企みがあった。
冬休みに入り、多々里はクラスメート全員に心を込めて年賀状を書く。
そして、元旦、多々里のもとにクラスメート達からの年賀状が届くのだが…」
名編だと思います。
「プリンクラブは友だちの証?」と共に、友達をつくろうとあがく、満福笑のきめ細かい描写が出色ではないでしょうか?
「その6 他人の秘密は蜜の味」
「4月8日 多々里は天国中学校に入学。
新しい環境になっても、いじめられっ子であることは変わりっこなし。
そんな多々里に、瓶棒ゆすり(最高のネーミング!!)という女生徒が接近する。
登校初日から友達ができたと喜ぶ多々里であったが、ゆすりには他人の秘密を知りたがる性癖があった。
ゆすりは多々里の日記帳を破って、その日記を盗み読みするだけでなく、多々里がそれに気づいても、すっとぼけて知らん顔。
散々な目にあった挙句、多々里がゆすりの本性に気付いた時、ゆすりにふさわしい「たたり」がくだされる…」
「外伝 不気味のノロイくん」
「小学校六年生のクラス。
乃呂井翔(のろい・かける)は、過大なプライドのわりには、ちっとも目立たない男子生徒。
誰からも相手にされず、積もりに積もった鬱憤を解消すべく、「呪い大百科」常時携帯し、いまや呪いのエキスパート…なのに、やはり誰にも構ってもらえない。
ただ一人だけ彼を心配してくれた女子生徒がいたが、それは神野多々里という女子生徒であった。
音楽の時間、リコーダーの練習を教師にバカにされた彼は「音」に注目する。
そして、「音」を呪いの道具として用いることで、今まで自分をシカトしてきたクラスメート達に復讐しようと企てる…」
多々里と乃呂井翔の因縁(もしくは、腐れ縁)はこの頃から始まっていたのですね〜。
何故常時リコーダーをプピ〜プピ―吹いている理由もこの作品ではっきりします。
不気田くんの人気はいまだ根強いものがありますが、その分身である乃呂井翔のキャラ、私はかなり好きです。
2016年8月8・9日 ページ作成・執筆