渡千枝「異次元からの便り」(1989年12月13日第1刷発行)

・「PART1 初戀」
「久保寺は幽霊や超常現象など全く信じない男子高校生。
 ある時、彼は安藤三枝子(さえこ)と電車で再会する。
 安藤三枝子は中学の時、彼が想いを寄せていた少女で、彼の引っ越し以来、会う機会がなかった。
 彼女は、昔、一緒に遊んだ神社の裏山の中に幽霊が出る所があると話し、翌日の五時に神社で待ち合わせをする。
 当日、彼が神社に行くと、彼女の声はすれど、森の中の木陰に隠れて、姿を現さない。
 彼は彼女を追い、森の中に入り込んでいく。
 彼女を見失い、しかも、雨まで降り出した時、彼は荒れ果てた小屋を見つける。
 そこで雨宿りをするのだが…」

・「PART2 眠り姫」
「坂巻翔一は山歩きとカメラが趣味の青年。
 彼は、高校の後輩である田村という娘から、ある頼み事をされる。
 彼女の兄は大学院生で、旅行中にひょんなことから家庭教師をすることになったらしいが、以後、消息を絶つ。
 手掛かりはT町からの最後の葉書のみ。
 そこで、翔一がT町の山に行くついでに、彼女の兄のことも頭の片隅に置いて欲しいという頼みであった。
 翔一は山で風景や植物を撮って過ごすが、ある時、悲鳴を耳にする。
 駆け付けると、金髪のハーフっぽい美少女が身じろぎもせずに立っていた。
 彼が声をかけても、何の反応もない。
 急に少女は我に返ると、翔一の姿を見て、逃げ出す。
 翔一が後を追おうとすると、足を滑らし、崖から転落。
 雨で意識を取り戻すと、傷ついた足の手当てがしてあった。
 だが、少女を撮影したフィルムがカメラから抜かれている。
 日が暮れ、雨の中、彼が雨宿りできる場所を捜していると、洋館がある。
 そこには、ジーナという外国人の女中と、先刻出会った少女が二人で住んでいた。
 少女の名は真海で、彼女は翔一を一目見た時から心惹かれる。
 しかし、ジーナは翔一を一日も早く屋敷から追い出そうとしていた。
 翔一はジーナの眼を避けて、真海と話す機会を得る。
 彼女はジーナによって、外界との接触を禁じられていた。
 また、田村の兄はここで家庭教師をしていたことがわかる。
 この屋敷の秘密とは…?
 そして、夜、翔一の寝室をガラス窓の外から眺めていた、醜い顔の正体とは…?」

・「PART3 幽霊船」
「8月。
 高等商船専門学校の実習生80名は大洋丸に乗って、遠洋訓練航海に出る。
 虎岩剛は小さい頃から海に憧れ、幼馴染の菱沼浩平と共に同じ道を歩む。
 ある夜、海の荒れる中、浩平はルックアウト(船首での見張り番)に立ち、行方不明になる。
 捜索されるも、生命は絶望的と見られた。
 次の夜、日付変更線を通過する頃、海の彼方に船が見える。
 あろうことか、その船は同じ大洋丸であった。
 連絡しても応答はなく、乗りこんで調べることになる。
 剛は浩平があそこにいると直感で感じ、行かせてくれるよう頼む。
 一等航海士をキャプテンに、剛を含めた総勢十人で救命艇に乗り、もう一つの大洋丸へ向かう。
 その船は全く彼らの船と同じ造りであったが、全く人気がない。
 彼らは船室へと降りるのだが、そこで見たものは…?
 この船は幽霊船なのであろうか…?」

 後袖の作者のコメントによると、180ページ描き下ろしという企画で描かれたとのことです。
 かなりしんどかった模様ですが、それでも手抜きはありません。
 中でも「幽霊船」はかなりの力作で、読み応えがあります。
 あと、「初戀」は実に心臓に悪いシーンがあります。
 渡千枝先生は絵がきれいなので、何気なくめくった先にショック・シーンがあると、心の準備ができていない分、こたえます。

2022年3月23日 ページ作成・執筆

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