高階良子
「魔界樹@」(1986年1月9日第1刷発行)
「魔界樹A」(1986年11月6日第1刷発行)

・「第1部 暗黒編」(単行本@/「なかよしデラックス」1985年9月号)
「渡瀬康隆は、事故のために、一年浪人する破目になった青年。
 彼は山奥にある伯父の別荘を訪れる。
 無人のはずが、中には香の匂いが漂い、二階の部屋には人の気配がある。
 その部屋には、一人の少女がベッドに鎖でつながれていた。
 彼女は桂木葉月と名乗り、半月もの間、父親によってここに監禁されているという。
 彼女は15歳かそこらだが、妙に艶めかしい。
 翌朝、彼女は昨夜のような素振りはなく、全く普通の少女。
 実は、彼女はロドリゴ=デテスという悪霊を操る男に狙われていた。
 彼女の話を聞いて、康隆は十四年前、青木ヶ原樹海で迷子になった時のことを思い出す。
 その時、少年だった彼は、洞窟の中で、地の底から生える巨大な樹木の前で、幼い女の子を捧げた祭壇の前で、儀式が行われるのを目撃する。
 司祭は、魔界の樹に、この女の子が十五歳になった時、花嫁として渡す代わりに、その実をよこすよう要求する。
 そして、魔界樹は女の子に印をつけるが、その女の子こそが葉月であった。
 康隆は彼女を救うため、努力することを約束するが、この別荘に、いとこの葉月が、彼を心配してやって来る。
 彼女は葉月を逃がしてしまい、葉月はロドリゴ=デテスの一味に拉致される。
 康隆は、葉月の父親を捜し出して、手掛かりを得ようとするのだが…。
 ロドリゴ=デテスの企みを阻止することができるのだろうか…?」

・「第2部 光明編」(単行本@/「なかよしデラックス」1985年10月号〜11月号)
「渡瀬杏子(16歳)は、両親の海外赴任中、叔父宅に預けられていたが、いろいろあって、自宅で一人暮らしを始める。
 植物好きの彼女は両親から庭の北側になら温室を作ってもよいと許可が下りるも、日当たりが悪いので、南側で工事を始める。
 すると、工事の最中に、地面から鉄の箱が出てくる。
 鉄の箱を開けると、中には見たことのない奇妙な果実が入っていた。
 温室が完成した後、早速その実を植えると、半日で大きな木に成長する。
 更に、その夜、満月の光の下、彼女の前に見知らぬ青年が現れる。
 彼は彼女の理想通りの容姿で、「魔界樹の実に封じこめられていた魔界の使徒」と名乗る。
 何でも望みを叶えると言われ、杏子は、先輩の萩原剛とデートがしたいと願う。
 魔界樹の精は彼女を霊界に連れて行き、そこで出会った少女が手渡すものを持ち帰れば、萩原剛は彼女に惹かれると話す。
 霊界で出会った少女が渡したものはブレスレットで、朝、目覚めると、杏子の腕にそのブレスレットがはまっていた。
 学校でこれを目にした萩原は彼女に興味を持ち、二人はデートの約束をする。
 しかも、剛には理事長の娘の北野さとみという恋人があり、デートの日はさとみの誕生日パーティーであった。
 それでも、剛はデートを優先するのだが、その理由とは…?」

・「第3部 月の魔力」(単行本A/「なかよしデラックス」1986年8月号)
「「魔界樹の精」に杏子は「ケイ」と名付け、家政婦の甥として一緒に暮らすこととなる。
 平穏な日々も束の間、彼らに復活したロドリゴ=デテスの魔手が伸びていた。
 新月の夜、温室の魔界樹がロドリゴによって持ち去られる。
 実は、杏子が魔界樹の実に血の洗礼を施してから三百日目、魔界樹は魔界の実に戻る。
 その時、ロドリゴが実に血を与えれば、魔界は邪悪なる者に支配され、この世は闇になるのであった。
 更に、杏子の両親が乗った飛行機がメキシコで行方不明となる。
 ケイの分身である蛇に導かれ、杏子はメキシコに向かう。
 そこで、遭難者の居場所を知っているという青年と出会い、ラバに乗って、ジャングルの中のマヤ神殿を訪れる。
 そこは闇の邪神アープチによって守られ、杏子の力ではとても太刀打ちできなかった。
 アープチに対抗するには、「血の主の妻」で「月の魔力をつかさどる者」であるイシュチェルの力を借りなければならないのだが…。
 杏子と彼女の両親の運命は…?」

・「第3部 月の魔力 PART.2」(単行本A/「なかよしデラックス」1986年10月号)
「杏子のもとに、山梨のF市に引っ越したエッコから電話がかかる。
 今、F市は恐ろしい闇に覆われ、人々は気が狂い、殺戮の嵐が吹き荒れていた。
 杏子はF市に行こうとするも、脱出しようとした人々が乗ったバスを崖崩れが襲い、唯一の道路は寸断される。
 杏子はエッコを助けるため、「光の戦士」となる決意を固める。
 ケイは彼女をアマゾン川の源流に連れて行き、「悪魔草」と呼ばれる植物の実を捜すよう言う。
 その実を手に入れた後、二人は青木ヶ原樹海に移動し、悪魔草の実に月の光を放射して、成長させる。
 悪魔草の花・茎・根を絞った汁を飲んだ杏子は凄まじい苦痛に身を引き裂かれるが、意識を取り戻した時には、様々な力を得ていた。
 彼女はエッコの身を案じつつ、F市に向かうのだが…。
 町を覆う闇の正体とは…?」

 高階良子先生による名作です。
 特に、A巻に収録されている二話は、一つがメキシコを舞台にしたエキゾチックなオカルトもの、もう一つは住民が殺人鬼になった町が舞台のホラーものと、かなりトバしております。(どちらにもゾンビが出てくる点もポイント高し。)
 「ハーレクイン」を基本としながらも、オカルト、ミステリー、ホラーと様々な要素を息つぐ間もなく繰り出しており、この引出しの多さは傑出していると思います。

2022年12月29日/2023年1月7・8日 ページ作成・執筆

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