山岸凉子「艮」(2023年7月21日第1刷・8月23日第2刷発行)

 収録作品

・「艮」(講談社「モーニング」2014年2・3合併号〜6号)
「樋口晶子は出版社に勤める女性。
 都心に一戸建てを買ったものの、夫の岳志は会社の派閥争いに巻き込まれ、北海道に左遷される。
 そこで以前、勤めていた出版社に再就職するものの、二歳の娘、葉菜は病弱で、しょっちゅう仕事を抜けねばならず、精神的・体力的に追い込まれていた。
 ある日、彼女はインチキ霊能者の由布由良から勝手口が鬼門だと指摘される。
 単なる迷信と思おうとするが、不幸や災難続きで、また、勝手口に連なる台所では奇妙な出来事が多い。
 彼女は元・同僚の嫁ぎ先の工務店にリフォームを依頼するのだが…。
 台所に潜むものとは…?」

・「死神」(幻冬舎「comicスピカ」2014年5月号、6月号)
「あるベテラン看護婦は死者を迎えに来るものを何度も視てきた。
 彼女にとって『死神』とは…?」

・「時計草」(小学館「ビッグコミック」2018年12号)
「彼女が目を覚ますと、そこは近所の公園のベンチであった。
 奇妙なことに自分が死んだように感じるが、どうやらちゃんと生きてるらしい。
 とりあえず、家に帰ろうとすると、懐かしい人と出会い、またベンチに戻っている。
 彼女はここが「この世」でないことに気付くが、かと言って、「あの世」のようにも見えない。
 思い余って、通りすがりの男性にここはどこか尋ねると…」

・「ドラゴンメイド」(講談社「モーニング」2021年46号)
「フランスで11世紀から13世紀に実在したリュジニャン一族の始祖譚。
 レモンダンは9歳の頃、父の従兄弟のポアティエ公に引き取られ、仕えてきた。
 ある日の狩りの時、公爵が手負いの猪に襲われ、猪を仕留めようとするも、公爵を誤って刺してしまう。
 その場から逃げ、泉の前で絶望していると、美しい娘が彼の前に現れる。
 彼女はメリュジーヌと名乗り、狩りでは皆、散り散りになっているので、彼に黙って城に帰るよう勧める。
 また、次期当主(長子ベルトラン)には鹿皮一枚分の土地を要求し、その後、この泉に来れば、大いなる幸運に恵まれると話す。
 レモンダンはメリュジーヌの言葉通りにして、次期当主からもらった鹿皮一枚と共に泉に戻ってくる。
 メリュジーヌは使者にハサミを渡すと、ハサミは端からぐるりと切り始め、鹿皮は信じられないほどに長くなり、レモンダンは泉を含む広大な領地を手に入れる。
 領主となったレモンダンはメリュジーヌに求婚。
 彼女は毎週土曜日には彼女を見ようとしたり、彼女が何をしているか探ったりをしないという条件つきで、それを承知する。
 結婚後、レモンダンの所領は栄え、立派なリュジニャン城を作り、子宝にも恵まれる。
 そんなある日、レモンダンの兄、フォレス公が城を訪ねてくるのだが…」

 巷には心霊実話マンガで溢れておりますが、山岸凉子先生の心霊マンガは真に「スピリチュアル」な一つなのではないかと私は考えております。
 まあ、山岸凉子先生に霊感があるのかどうかは私には知る由もありませんし、描いてあることが真実かどうかもはっきりしません。
 でも、説得力が違う!!
 と言っても、重いわけではなく、世界観が心にすっとしみ入ってくるのです。
 そして、読み込めば読み込むほど、深い!!
 私が思うに、それは作者の内観から自然に生み出されているからではないでしょうか?
 特に、表題作の「艮」は心霊ものと人間ドラマが巧みに絡み合った傑作だと思います。
 幻想的な「時計草」も悪くはないけれど、最後の「人生は修行」という主張が個人的には受け入れられませんでした。
 人生の折り返し地点を過ぎた歳になると、そういう考え方より、昨今流行の「本当の自分で自分の楽しみを追求して生きる」という生き方の方が死ぬ際に多少、後悔が少ないように思います。
 でも、そんな生き方ができれば、苦労なんかはしないのですが…。

2025年7月16・17日 ページ作成・執筆

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