庄司陽子「分水嶺」(1990年12月11日第1刷発行)

 収録作品

・「分水嶺」(1989年「BE・LOVE」22〜23号)
「開店したばかりーのゲイバーのマダムが転落死する。
 この事件を担当するのは、現場主義のベテラン、大島刑事と、犯罪心理学の学位を持つ、駒田智刑事。
 マダムの白沢正巳について調べたところ、25年も連れ添ったパトロンの遺産で、北海道から東京に出て来たことがわかる。
 白沢正巳のパトロンは相川という町の名士で、少年を施設から引き取って慰みものにしていた。
 正巳の前の愛人は芦川誠という少年で、6歳の時、相川に引き取られるが、16歳で養子解消され、金融業社長の赤石ときに売られる。
 誠は赤石ときを殺害し逃亡、その後、青函連絡船から身を投げていた。
 その時の目撃者が篠山竜二という出稼ぎに出る青年で、今、彼は実業家として華々しい名声に包まれていた。
 篠山竜二が、白沢正巳の転落死したビルにいたことから、大島刑事はある推理をする。
 篠山竜二の秘密の生涯とは…?」

・「ナイトメア ―悪夢―」(1990年「BE・LOVEパフェ」5月号)
「PART-T 高速道」
 魂の存在を証明する本を書いた三尾秀文。
 彼の本は反響を呼ぶも、彼自身は心霊体験をしたことがなかった。
 次の講演地に車で向かう途中、彼は突如、幽体離脱をするのだが…。
「PART-U 高速道」
 建築デザイナーの鳥越は、ある夜の帰宅途中、自殺に巻き込まれる。
 詳しく説明すると、トラックの前にとび出した女性がはねられた後、彼の車のボンネットに叩きつけられたのであった。
 その時、自殺した女性と目が合い、鳥越はその表情が忘れられず…。
「PART-V 幹線道」
 うたた寝した時、若い女性が奇怪な夢を見る。
 その夢は、人の目だけで、赤とグレーの斜めの縞に彩られていた。
 その後、彼女はデートに出かけるが、その夢が心から拭えない。
 デートの帰り道…。

 「分水嶺」は骨太のミステリー・ドラマで、名作だと思います。
 恐ろしくドロドロした話ですが、ヒューマニズムが根底にあり、泣けます。
 ラストはちょっと黒澤明監督の「赤ひげ」が入っているかも。(注1)
 ただ、少し引っかかるのが、靴紐の件。あれって、「オカマの身だしなみ」なんですか?

・注1
 あと、血まみれの包丁が握った手から離れず、振り放すシーンは「ゴッドファーザー」の影響?

2022年1月21・22日 ページ作成・執筆

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