犬木加奈子「暗闇童話集」(1988年7月13日第1刷・1995年1月5日第15刷発行)

 収録作品

・「あけてごらん」(昭和62年発行「週刊少女フレンド第21号」所載)
 少女が古本屋で買った、一冊の本。
 ページをめくると…
「第1話 プレゼント」
 プレゼントをもらおうとする少女。
 どうせなら大きなものをと考えると、少年が現れ、大きいプレゼントはダメだと告げる。
 少年の忠告を無視した少女がプレゼントの箱に見たものは…
「第2話 甘い家」
 無人の屋敷の敷地内で蟻を殺して、遊ぶ少女。
 少女の前に、屋敷の主人と名乗る人物が現れ、屋敷の中で雨宿りするよう勧める。
 甘いお菓子という言葉に惹かれて、少女は屋敷に入っていく。
 屋敷の主人は少女をお菓子がたくさんある部屋に案内するが、少女はそこに閉じ込められてしまう。
 部屋の中には気色の悪い人物が大勢いて、少女にここは「食料庫」だと教える…」
「第3話 本を開く少女」
 ある少女がひまつぶしに古本屋で本を買いました。
 そして…

・「首」(昭和63年発行「フレッシュフレンド夏の号」所載)
「色白で、お目めぱっちり、そして、ほっそりと長い首。
 そういう美人の条件を兼ね備えた塚本ルリ子は、無口で大人しい少女であった。
 ルリ子とは正反対のナナコは、ルリ子をかき口説いて、夏のキャンプに誘うのに成功。
 だが、宿営地に向かう途中、ナナコとルリ子は崖から滑落。
 仕方なく、そこへテントを張ることとなる。
 休む前に、ルリ子はナナコに寝顔を見ないように頼む。
 しかし、夜中に目が覚めたナナコは、ナナコの首が胴体から離れているのを目にしてしまう。
 慌ててテントから跳び出したルリ子が目にしたものとは…」

・「蛆蛍(うじほたる)」(昭和62年発行「週刊少女フレンド第17号」所載)
「班の夏休み研究のために、光太の田舎を訪れた、いずみ、森男、しげる、かおり。
 光太は、蛍が大好きな心の優しい少年であったが、その大人しさ故、いじめを受けていた。
 蛍の乱舞する川辺で、光太は蛍についてアツく語るが、いずみ以外は全く興味を示さない。
 それどころか、森男達の蛍の幼虫に対するいたずらは日々ひどくなる。
 ある日、いたずらで蛍の幼虫を飲まされた光太の様子がおかしくなる。
 何も食べずに、昼は寝込み、夜になると起き出す。
 また、どんどん痩せていくのに、眼だけは怪しく光っているのだった。
 そんな中、しげおが行方不明となり、夕方、いずみ達は彼を捜しに出るのだが…」

・「おにごっこ」(昭和62年発行「ハローフレンド8月号」所載)
「新しい転校生のレイコの屋敷に招かれた、三人の同級生。
 高慢ちきなミミ子、裏表の激しいマリ子、不平不満愚痴の塊の春代。
 勉強の後、レイコは三人に鬼ごっこをして遊ぼうと提案する。
 外にさえ出なければ、この広いお屋敷のどこにでも隠れていいのだった。
 言い出しっぺのレイコが鬼をすることとなり、三人は思い思いの場所に隠れる。
 ミミ子がレイコの部屋のクローゼットに身を潜めていると、誰かの悲鳴が聞こえてくる。
 そして、また一人…」

・「かえり道」(昭和62年発行「週刊少女フレンド第24号」所載)(注1)
「黄昏時、下校途中の女子高生、ルミ子、活美、修子。
 修子は、この時間に車の事故が最も多い、と話す。
 と言うのも、周囲の明るさと車のライトの明るさが同じで、人の姿が消えて見えるためであった。
 ふとルミ子が気付くと、夜は更け、周りに誰もいない。
 家に帰ろうとするが、道がさっぱりわからず、無人の町をさまよう。
 踏切のところで、ようやく人に出会うが、それは轢死した人間の姿であった…」

・「あんぶくたった にえたったー」(昭和63年発行「フレッシュフレンド春の号」所載)
「春、父親の仕事の都合で、田舎の村に越してきたルル子。
 全く何もないところで、ルル子は不満たらたら。
 それにかこつけ、好き嫌いの激しいルル子は母親の料理には手もつけず、スナック菓子ばかり貪り食う。
 そんなルル子の付近に出没する、不気味な老婆。
 老婆は、奇妙なわらべ歌を歌いながら、ルル子にこの村には餓鬼がいるから、食べ物を粗末にしないよう何度も警告する。
 ばかばかしいと老婆の警告を一蹴するルル子であったが、奇妙なことに気付く。
 夕方、村の家では、食べ物の乗った皿を戸口に置く風習があること。
 そして、ルル子の家の台所からいつの間にか食料が消えていることであった。
 村にうごめく、小さな影の正体は…?」

・「おるすばん」(昭和62年発行「週刊少女フレンド特別増刊4月1日号」所載)
「リカ子は今日も一人でおるすばん。
 頭がよく、しっかりものと近所でも評判の少女。
 しかし、その正体は、性悪ないじめっ子であった。
 先日も、お化けの話をしていたケイコをいじめて、自殺に追いやったばかり。
 そのケイコが、マンションに一人のリカ子の前に現れる。
 ケイコが話していたお化けたちをともに…」
・「うしろのあなた」(昭和63年発行「週刊少女フレンド第7号」所載)(注2)
「犬木加奈子先生の家で行われた怪談話会で語られた、ゾッとする話が三編」

 犬木加奈子先生の初単行本であります。(違ったら、ごめんなさい。)
 知らない人がいるかもしれませんので、念のために書いておきますが、ここ数年頃から、犬木加奈子先生は再びペンを執り始めました。
 今までのブランクを取り戻すかのように、鼻息も荒く(失礼!!)、あちらこちらで活躍しております。
 そこで、この場を借りて、応援の意味も込めて、犬木加奈子先生の魅力について(ささやかに)語ってみたいと思います。(注3)
(こんなマイナーなサイトで、しかも、こんなちっぽけなページで語ろうというのも、失礼な話でありますが…。)

 初期の作品の収められた「暗闇童話集@」を読んで、つくづく感じたことは、犬木加奈子先生は女性で唯一の「全身怪奇漫画家」であるということでありました。
 「骨の髄まで」というレベルを超えて、全身全霊で「怪奇漫画家」をしております。(注4)
 女性漫画家は百人中九十九人、「少女漫画」にベースがあると思うのですが、犬木加奈子先生のベースは徹頭徹尾「怪奇」であります。
 楳図かずお先生、日野日出志先生、水木しげる先生、山岸涼子先生といった、先人達の怪奇漫画からホラー映画まで喉元まで溢れんばかりに詰め込んで、それをきっちり自家薬籠中の物にした、その驚異的な「消化力」に、まず舌を巻きます。(初期の作品ではいろいろな怪奇漫画の影響がダイレクトに出ていて、それはそれで味わい深く思います。)
 そして、自らの血肉にした怪奇漫画の要素に、(絵柄とは裏腹の)女性らしい繊細な感受性でもって、新たな側面に光を当て、もっと奥行きのある、深い洞察に満ちたストーリーを再構築したところに、その魅力と凄みがあると私は考えております。
 それは、単に「こわい」マンガではなく、真実を一粒含んでいるからこそ「こわい」漫画。
 こうして、犬木加奈子先生が新たに開拓した(怪奇漫画というジャンルの)土壌から、今、多くの怪奇漫画家が素晴らしい作品を産み出しております。
 こうした貢献と、怪奇漫画というジャンルを確立すべく90年代を走り抜けたことを考えあわせますと、いまだホラーコミック界の「女王」(注5)と断言してかまわない…
 と、私は思いますが、御本人は自分のことを「冠をつけた、ただのドレイ」と事あるごとに言っております。
 結局のところは、犬木加奈子先生御自身にしかわからないことなのでありまして、私の書いたことは単なるゲスの勘繰り以外の何物でもないのであります。

 というわけで、個人的な意見をつらつらと書いてみました。
 見当違いも多々ありますし、言葉足らずなところもあります。
 書きながら、この文章を書く意義があるのかどうか迷いましたが、とりあえず掲載することにします。
 あくまでも個人的な意見ですので、決して鵜呑みにしないようにしてください。
 あと、不都合があるようであれば、すぐにでも削除しますので、その際は、お手数をおかけしますが、連絡お願いいたします。(注6)

 最後に、犬木加奈子先生は近頃、ダーク・ファンタジー傾向の作品が多いような気がしますが、それもまたよし!!
 描きたいものを描いて、どんどん新しい読者にアピールしましょう。
 微力ながら、応援しております。

・注1
 ラストを見て、子供向けの怪談話を集めた本(単行本の分厚いサイズ)のトラウマがフラッシュバックしました。
 夜、雪山の山小屋の高窓から、眼球を片目から垂らし、頭のぶち割れた老婆が中を覗き込んでいるという内容で、絵が…もう、絵が…ダメでした。
 同じ本だと思いますが(違う可能性あり)、巻頭のカラー写真のページで、黒目の日本人形の写真がありまして……もう、ダメだ〜。

・注2
 このマンガを読めば、読者の少女達は犬木加奈子先生が「魔女の服装をして、ロウソクを立てて、血をインク代わりにしてマンガを描いている」と誤解しても仕方ないかもしれませんね。

・注3
 犬木加奈子先生については、インターネット上においても、多く語られていることでありましょう。
 それこそ無数の卓見があるとは思いますが、私、ネット上での知識・意見に頼ることはなるべく避けたいと思っておりまして、全くと言っていい程、読んでおりません。
 もしかすると、私の意見は、すでに他の人によって述べられた意見である可能性があります。
 その際は、その旨、連絡いただけますと、速やかにこの文章を削除させていただきます。

・注4
 ツイッターを拝見して、そこに書かれた情報を参考にする限り、犬木加奈子先生の成分は、「怪奇漫画」が80%、「幼少期の記憶」が10%、「女王時代のイヤな思い出」が5%、「トルネコ」が5%(時期により変動)でありましょうか。
 まあ、あまりテキト〜なことばかり書いてると、マシュマロマンの笑みを浮かべた犬木加奈子先生に首を捩じ切られたり、頭蓋骨を陥没させられたりするかもしれないので、やめておきましょう。桑原、桑原…。(もう遅いんだよ!!)

・注5
 私の知る限り、犬木加奈子先生以外に「女王」の称号を持つ、女性漫画家さんが二人おります。
 「貸本怪奇漫画の女王」さがみゆき先生、「トラウマ・クイーン」もしくは「裏の女王」関よしみ先生。
 異論はございません…。

・注6
 何はともあれ、書きたいことを書いて、さっぱりしました。
 クレームが来て、この文章が削除されることになっても、私としては思い残すことはありません。

・備考
 初版本、pp5・6、綴じ外れ。

2016年9月12・15日 ページ作成・執筆

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