犬木加奈子「かなえられた願い@」(1991年8月10日第1刷・1995年7月5日第9刷発行)
収録作品
「かなえられた願い」
悪魔を捕まえる方法について書かれた本。
その方法とは、満月の13日の金曜日、午前零時に手鏡を二つ合わせ、悪魔が鏡から鏡へとび移る瞬間に、小瓶に封じ込めるというものであった。
その際、悪魔は、逃がすことと引き換えに、一つだけ願いを叶えてくれるのだと言う。
その本を手に入れた少女達が悪魔に何を願うこととは…?
・「第1話 母の願い」
パパがいなくなってから、のの子のママは泣いたり、ふさぎ込んでばかり。
パパの代わりに見知らぬおじさんが時たま訪ねてくるが、そんな時のママは半狂乱。
小さなのの子はどうしたらよいかわからず、途方に暮れる。
ある日、のの子が一人でお遣いに出かけた時、店のおじさんから悪魔に願いを叶えてもらう方法を教えてもらう。
のの子はママの願いを叶えるために、13日の金曜日を待つのだが…。
・「第2話 人魚の声」
溢れんばかりの可愛らしさで男子生徒を虜にする青空すずめ。
もちろん、アイドル志望であったが、その歌唱力は百年の恋も一気に冷めるもの。
プライドをいたく傷つけられ、彼女は歌のレッスンに通うものの、焼け石に水。
そんな時、彼女は悪魔を捕まえる方法について書かれた本を手に入れる。
首尾よく悪魔を捕まえた彼女は、悪魔から「人魚の声」を与えられる。
だが、その声には呪いがかけられていた…。
・「第3話 魔力」
悪魔や魔力の存在を盲信し、憧れる少女。
彼女の夢は、魔界の力で人間世界を征服するという壮大なものであった。
しかし、本人がいくら黒井ミサのつもりでも、現実には、何の力のない、ひねくれ者の少女でしかない。
ある日、彼女は悪魔を捕まえる方法について書いた本を購入する。
彼女が悪魔に「魔力」を願うが…。
・「第4話 クッキードール」
女子生徒の憧れのニヒルに想いを寄せる少女。
彼の「手作りのクッキーをくれるような女の子」が好きという呟きを耳にして、俄然、クッキー作りに精を出す。
だが、彼にクッキーを渡そうにも、彼の取り巻きの女子生徒三人組に邪魔され、叶わない。
クッキーはボロボロにされ、泣きながら、彼女が公園でクッキーを捨てようとした時、ホームレスの男性がクッキーを求める。
クッキーと交換に得た本には悪魔を呼び出す方法が書かれていた。
悪魔は、彼女に人型のクッキーを四つ渡す。
一つには自分の名前を書き、それをニヒルに渡し、残りの三つは、ニヒルの取り巻きの女子生徒の名前を書き、本人の目の前で粉々にするよう、悪魔は彼女に告げる。
ただ一つ、注意しなければならないのは、この魔術は非常にモロいものであった…。
・「第5話 影」
岸ユカリは人気絶頂のアイドル。
売れっ子ではあったが、非常にわがままで、周囲の人間は振り回されっぱなし。
ある時、彼女は悪魔を呼び出す本を入手する。
あまりの多忙さにうんざりしていた彼女は悪魔にもう一つ体があることを願う。
すると、鏡の中から彼女の影が脱け出し、以来、彼女の影は彼女の代わりを勤めることとなる。
仕事を影に全部押し付け、ユカリはめいいっぱい羽を伸ばすが、一方で影は確実にキャリアを積み上げていた…。
・「第6話 美女の肖像」
コレクターの間で話題になっている、美女の肖像画。
モデルも、作者も全く謎のベールに包まれており、それがまた、評判を呼ぶ。
だが、この絵の作者は、非常に醜い女性であった。
あまりの醜さに、資産家の両親は、子供の頃、彼女の遊び相手として醜い男児を与え、人前に決して出さなかった。
そして、彼女は成人し、両親の死後、成長した男児を唯一の召使として、広大な館で絵だけを描き続けてきたのである。
ある日、彼女のもとに、悪魔を呼び出す方法について書かれた本が届けられる。
彼女は悪魔に、自分が描いた絵のように美しくなれることを望む。
悪魔は、美女の肖像画の上に、自分の醜い顔をありのまま描くよう告げて、姿を消す。
その通りにした彼女は、絵と同じ美しさを得るのであるが…。
・「第7話 それがわたしの願い」
チンケなこそ泥の唯一の収穫は、悪魔を呼び出す方法が書かれた本であった。
試しにやってみたら、本当に悪魔が現れて、こそ泥はうろたえまくり。
願い事も、全く決断力がなく、ちっとも決まらない。
結局、彼は身に過ぎたことと判断するが、悪魔は何か一つ願いを叶えなければならない。
そこで、彼は、人生で一度だけ親切にしてくれた老人の願いを叶えてくれるよう悪魔に言う。
悪魔がその老人のもとに行くと…。
(第1話〜第3話 1990年「少女フレンド4月1日号増刊」所載/第4話〜第7話 1990年「少女フレンド8月15日号増刊」所載)
「ハロウィンの秘密」(1990年「少女フレンド」第22号/所載)
町はずれの丘の上に建つ、古びた洋館。
そこには老婆が一人住んでおり、館の一番高い窓から毎日、外を眺めていた。
子供達は老婆を鬼ばば、洋館は「魔女の家」と呼んで、気味悪がる。
ハロウィンの日、町内の子供会でハロウィンが催される。
子供達がはしゃぎまわる中、ミーヤは相変わらず、グズでノロマで、そばかすだらけで、縮れっ毛の女の子。
お菓子一つもらえないミーヤを悪友達は「魔女の家」に押し込み、お菓子をもらってこなければ仲間外れと告げる。
仕方なく、ミーヤが最上階の部屋を恐る恐る訪れると、老婆を中心として、大勢の人がパーティを開いていた。
老婆に御馳走を勧められたものの、彼女はキャンディをもらっただけで部屋から逃げ去る。
以来、そのキャンディを食べるごとに願いが叶い、七年後には美しい娘となる。
だが、彼氏とのハロウィン・パーティを目前にして、彼女にトラブルが舞い込む。
彼女はキャンディを手に入れるために、魔女の家に向かうのだが…。
「幸運の星」(1989年「少女フレンド」第13号/所載)
ド近眼で、そばかすだらけ、おまけにガリガリ、髪はパサパサ、肌はガサガサといいとこなしの少女、平野スガ子。
せめて勉強で目立とうと努力するものの、ガリ勉しても、成績は上がらず、理屈っぽさばかりが鼻について、煙たがられる悪循環。
もちろん、運動神経もなく、人気もなく、幸運もなく、ないない尽くしの人生であった。
そんな人生にうんざりして、スガ子は自殺するために、樹海に入る。
そこで、彼女は足を滑らし、穴に転落、穴の底にはミイラ化した女性の死体があった。
女性の死体は首にペンダントを下げており、それを手に入れたスガ子に生きたいという欲望が蘇える。
すると、いつの間にか穴底にトンネルが通じており、スガ子はそこから脱出。
以来、スガ子の人生は自分の願った通りに進むようになる。
どうやら、彼女の手に入れたペンダントは「幸運の星」という宝石らしい。
スガ子は今まで手に入らなかったものを次々と手に入れていくのだが…。
2017年10月27日 ページ作成・執筆