犬木加奈子「かなえられた願いB」(1995年12月12日第1刷発行)

 悪魔を捕まえる方法について書かれた本。
 その方法とは、満月の13日の金曜日、午前零時に手鏡を二つ合わせ、悪魔が鏡から鏡へとび移る瞬間に、小瓶に封じ込めるというものであった。
 その際、悪魔は、逃がすことと引き換えに、一つだけ願いを叶えてくれるのだと言う。
 その本を手に入れた少女達が悪魔に何を願うこととは…?
「第1話 天国へいけない悪魔」
 罪を犯すことに快感を覚える、残忍な青年。
 彼は「悪魔の書」のことを知り、遂に、悪魔を捕まえることに成功。
 彼は望み通り不死の身体を得て、好き放題に振る舞うが…。
「第2話 彼が見える」
 ある青年に想いを寄せる少女。
 いくら疎まれても、彼女は離れたところから彼を見続けるだけで幸せであった。
 だが、もうすぐ夏休み。
 そうなれば、一月以上、彼の姿を見つめることができない。
 落ち込む彼女は、偶然に「悪魔の書」を手に入れる。
 悪魔を捕まえ、いつでもどこでも彼の姿を見れるよう願いを叶えてもらうのだが…。
「第3話 オルゴール」
 ある夜、年老いた、元・オルゴール職人の屋敷を、女児を連れた男性が訪れる。
 男性は老人の故郷に住む者で、老人にペンダント型のオルゴールを見せる。
 このオルゴールは、老人が若い時、婚約者の真理亜にプレゼントしたものであった。
 男性は、老人にオルゴールについての話を聞かせるよう促す。
 そして、老人は、世界一美しい音色を奏でるオルゴールを悪魔に望んだことについて語る…。
「第4話 星になった人」
 病気で余命幾ばくもない、キララの母親は、空の星になって、キララを見守りたいと話す。
 だけど、都会の夜空はネオンでどんよりと濁り、小さいキララは空がどんなものかわからない。
 キララが星について思いを巡らしていると、ご近所のアル中親父から「悪魔の書」を入手。
 悪魔を捕まえたキララが、人を星にするにはどうしたらいいか悪魔に尋ねると…。
「第5話 スローボール」
 野球が大好きな少年。
 「好きこそ物の上手なれ」とは言うものの、実際は「下手の横好き」。
 そこで、得意な勉強で運動神経をカバーしようと、いろいろと本を漁るうちに、「悪魔の書」が目に留まる。
 悪魔を捕まえた少年は、時間を自由に操れるようにしてもらうのだが…。
「第6話 神さまの御心」
 何不自由ない暮らしをしているものの、孤独に苛まされる老婦人。
 過去、彼女は伴侶、子供達、友人達に恵まれていたが、次々と失い、引き換えに、今の生活を得た。
 神への信仰を捨て、「貧しくとも親しい友人や家族にかこまれた生活」を手に入れるため、彼女は悪魔を捕まえるのだが…。
「第7話 むさぼる脳」
 食欲は旺盛だが、知識欲はさっぱりの少女、駄々メイ子。
 楽をしながら、頭を良くしようとするものの、そんな都合のいい話はなく、成績はビリっけつ。
 ある時、彼女は、積んでるだけの参考書の中から「悪魔の書」を見つけ、悪魔を捕らえることに成功。
 メイ子は、食事と同じように、脳が知識を吸収するよう、悪魔に願いを叶えてもらうのだが…。
「第8話 花冠の女王」
 華麗な容姿の峠野華子(とげの・はなこ)。
 美しい薔薇には何とやら、その華々しい外見とは裏腹に、性格はトゲトゲしい。
 そんな彼女を心から愛する津海は、召使いのように甲斐甲斐しく尽くす。
 だが、彼女に金持ちのボンボンが急接近し、津海は今までのように彼女に仕えることができなくなる。
 昔、手に入れた「悪魔の書」を参考に、悪魔を捕まえた津海は、華子を彼だけが愛することができるよう願う…。
「第9話 わたしは売れっ子」
 ちっとも芽の出ないタレント、憂田ウリ子。
 とにもかくにも、売れっ子になるためには、カオを売らなきゃいけないが、これが並大抵のことでない。
 ある日、偶然に「悪魔の書」を手に入れたウリ子は、悪魔の捕獲に成功。
 芸能界で成功するために、カオが売れるよう、願いを叶えてもらうのだが…。
「第10話 闇にかくれた幸福」
 生まれつき盲目のお姫さま。
 彼女は周りの人々から暖かく守られ、成長し、素晴らしい恋人までも得る。
 幸せいっぱいの彼女であったが、盲目であることから、ある気がかりが生まれる。
 自分は本当に美しいのであろうか?
 思い悩んだ末、姫は、城の地下の図書館から「悪魔の書」を手に入れ、目が見えるよう、悪魔に願うのだが…。

 巻末に、「犬木加奈子イラスト劇場」(テーマ・黄泉の館にご招待)あり。

 個人的なお気に入りは、「オルゴール」と「むさぼる脳」(勉強し過ぎて、頭がボーン!!)です。
 「彼が見える」は、SFホラーの古典「X線の目を持つ男」を思い出しました。

2018年1月5日 ページ作成・執筆

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