成毛厚子「影を殺した女」(1986年6月14日第一刷発行)

 収録作品

・「悪夢・ナイトメア」
「大学の助教授のローランと、大学のマドンナ、メリンダは結婚式を二週間後に控えていた。
 ある夜、友人達との集まりの際、マーシャという娘があるゲームを提案をする。
 夜中の0時過ぎ、真っ暗な部屋に蝋燭だけを持って入り、大きな鏡を右肩から振り返って見ると、未来の伴侶の姿が映るという。
 皆、乗る気になり、ローランも参加することになるが、実際、未来の伴侶なんかが鏡に映るはずはない。
 しかし、臆病なメリンダのため、彼は鏡に自分の似顔絵をマジックペンで描きこむ。
 ところが、メリンダの前に、マーシャが鏡のある部屋に入ってしまう。
 マーシャの後、メリンダの番となるが、鏡のある部屋から彼女の悲鳴が聞こえる。
 メリンダはひどく怯えているものの、その原因はわからない。
 その後、二人は結婚し、メリンダは妊娠する。
 だが、彼女はお腹の子供を恐れている様子で…」

・「恐怖招待席@ お話し人形」(1975年「別冊少女フレンド」2月号)
「超常現象の研究家のシンクレアは、敵対しているロイに、霊魂の存在を証明すると宣言する。
 そのために、彼は自殺し、次の日の晩に、西洋人形を霊媒にして、死後の世界から交信するという。
 約束の晩、人形の前に集まったロイ達の目の前で、超常現象が起こるのだが…」

・「恐怖招待席A めずらしい味」(1975年「別冊少女フレンド」2月号)
「向かいの家での殺人を目撃した娘。
 彼女は警察に連絡するものの、肝心の死体が影も形もない。
 その家の主人は多趣味な人間で、今、最も関心があるのは「完全犯罪の遂行」とのことらしいが…」

・「魔界へのいざない」(1979年「増刊少女フレンド」3月号)
「ハンナ・バーモントという老女の出した、「悪魔買いたし」という新聞広告。
 彼女のもとに、グラハム・カーシュという黒魔術を研究する青年が訪れる。
 彼女は、子供の頃、古井戸に引きずり込まれ、行方不明になった妹のメリンダを、悪魔の力によって、救い出すことを願っていた。
 カーシュは、ハンナに、鏡を通じて悪魔が現れるよう願い、生贄として金貨百枚を古井戸の底にまくよう指図する。
 実のところ、カーシュはペテン師であったが、老女は大満足で、彼にお礼を言う。
 老女のもとに、本当にメリンダが戻って来たらしいのだが…」

・「消えたシンメトリー」(1977年「増刊少女フレンド」12月号)
「シリアとアイリスは双子の姉妹。
 ただ、内気なシリアと活発なアイリスという具合に、性格は全く対照的で、男友達のステファンによると「鏡の表と裏」のよう。
 その言葉の通り、姉妹はいつ何時でも共に過ごしていた。
 冬のある日、アイリスはステファンにプロポーズを受ける。
 しかし、アイリスにはある懸念があり、それは、三年前から以前の記憶がない事であった。
 ステファンはそれを受け入れ、帰宅後、アイリスはプロポーズの件をシリアに報告する。
 しかし、シリアも彼のことが好きであった。
 シリアはアイリスに「わかれるときがきた」と告げるのだが、その意味するところとは…?」

・「影を殺した女」(1974年「別冊少女フレンド」12月号)
「億万長者で社交界の憧れの的、チェスター=グリーンの婚約者は、貧乏なメイドのレナであった。
 レナの双子の姉、シシィはレナの幸運に嫉妬し、レナと入れ替わろうと目論む。
 おあつらえ向きに、チェスターには商売敵が多く、また、健康面でも不安があった。
 婚約発表会の夜、シシィはレナに、彼女も彼に結婚を申し込まれたと嘘をつき、レナの不安を煽る。
 そして、レナに、彼の愛情を確かめるため、シシィに変装して、海辺の別荘に彼を呼び出すよう提案するのだが…」

・「摂氏38度の殺人」(1976年「増刊少女フレンド」7月号)
「夏真っ盛り。
 猛烈な暑さで、ニコル=デュビエが目覚めると、彼の服には血がついており、戸棚の中に若い娘の死体があった。
 昨夜は、友人のドミニクと町に繰り出し、女子高生二人をひっかけて飲んだまでは覚えているのだが、後の記憶がない。
 このままでは疑われるのは必至なので、彼は死体を運び出して、川に捨て、証拠は隠滅する。 
 しかし、ドミニクの証言から、警察は彼に疑いの目を向け、ニコルは逃走。
 途中、暑さにあてられ、気絶したところを、老婆と若い娘に介抱される。
 ベッドで彼は休むが、ラジオから、彼がドミニクを殺害したというニュースが流れてくる…」

 双子を題材とした「消えたシンメトリー」と「影を殺した女」の出来がずば抜けております。
 「双子」というテーマは、成毛厚子先生の性に合っていたんでしょうね。

2020年10月10日 ページ作成・執筆

講談社・リストに戻る

メインページに戻る