黒岩一平「魔風吸血剣」(190円)



「次の指南役を決めるための御前試合に赴く、筒井十兵衛。
 途中、瀕死の武士から、ある刀を高野新十郎という武士に渡すよう頼まれる。
 そして、試合以外にはこの刀を抜かないようにと伝言も託される。
 実は、この刀は武州川越藩から盗み出された宝刀「一干子村正」であった。
 十兵衛は川越藩の侍達から刀を返すよう迫られるが、武士が一度交わした約束を違うことはできない。
 侍達を返り討ちにした十兵衛であったが、密命を受けたくのいち「赤影」がひそかに後を追う。
 宿で休む十兵衛は、預かった刀に異変が起きているのに気づく。
 刀は「ヒイー ヒイー」と泣きわめき、十兵衛が刀を手に取ると、急に人を斬りたくてたまらなくなる。
 あっという間に、十兵衛の命を狙っていた忍者を斬殺。
 刀は血を吸って満足するが、十兵衛は喀血。
 その刀は血を吸った後、持ち主を苦しめる妖刀であった。(理由はよくわかりません。)
 忍者達から攻撃を受けながらも、妖刀により撃退し、遂に高野新十郎に刀を渡すこととなる。
 が、高野新十郎は、御前試合での十兵衛の相手であった。
 妖刀を相手に十兵衛はどう戦うのであろうか…?」

 個人的に、傑作だと思います。
 大抵の「魔剣もの」というと、その剣の持ち主がジャンキーのようになって人を斬り殺しまくって云々というストーリーが大半ですが、この作品に出てくる魔剣は恐ろしくアグレッシブです。
 泣きわめきながら、鞘から抜け出し、畳や障子を切り裂きながら、持ち主のいるところまでわざわざ飛んでいくのですから。(上の右側の画像を参照のこと)
 だったら、自分で人を斬って、血を吸えばいいのに…と思いますが、まあ、いろいろと(作者側の)事情があるのでしょう。
 そして、本当に血を吸ってますよ、この刀!!

 血生臭い描写の後で、「ぽわぽわ」と血が刀に吸い込まれていく描写はどこかほんわかしており、奇妙さが引き立ちます。
 私が記憶している限り、言葉通りに「血を吸う」魔剣を扱ったマンガはこれだけだと思います。
 最後に、この作品で紅一点のくのいち「赤影」はなかなか力が入っており、素直にかわいいと思います。
 くのいちの割に、ケバ過ぎるような気がしないでもないのですが、マンガの世界にはまだまだ「どう考えても、ありえない」くのいちが山ほどいるので、よしとしましょう。

・備考
 カバー少々痛み、かつ、貼り付け。巻末に貸出票の剥がし痕あり。



平成27年11月28日 ページ作成・執筆

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