松下哲也「炎と少女」(190円)

「幼い頃の事故により、両足が麻痺している織原志麻。
 志麻は、片親で娘を養うために水商売に身を置く母親を嫌悪していた。
 志麻は母親の代わりに、療養所の心優しい看護婦、高瀬満里を頼りにして、日々リハビリに励む。
 そんなある日、高瀬満里が結婚することが決まり、志麻はショックを受ける。
 しかし、高瀬満里のもとに結婚相手が亡くなったという電報が届く。
 悲観して、自殺の道を選ぶ満里。
 その死体には激しく鞭打たれた痕があり、死体のそばには近所の寺に住む親念という若い僧の姿があった。
 後、死因は薬物ということで、親念は釈放される。
 高瀬満里の墓参りのために、志麻は足しげく寺を訪れるが、その際に、住職の親海から寺に住まないかと提案を受ける。
 家に帰りたくないばかりに、志麻は住職の言葉に従うことにする。
 そこで、複雑に絡み合う人間関係が明らかになるのだった…」

 松下哲也先生の初期の作品であります。
「松下哲也≒三田京子」という印象が強くあると思いますが、初期は池川伸治先生の影響大です。
 作品的には発展途上といった感じでして、ストーリーが行き当たりばったりのちぐはぐなものでして、決して褒めれたものではありません。
(が、後記にも書かれていますように、そういうことは作者が一番よくわかっているものです。わかっていなければ、「プロ」とは言えませんね。)
 後半になって、無理やりに三島由紀夫「金閣寺」を捩じ込んでくるあたりのアグレッシブさを評価したいと思います。(ストーリー的には明らかに蛇足ですが…。)
 あと、池川伸治先生ちっくですが、松下哲也先生独特の清楚さを持った看護婦の高瀬満里がなかなかに味わい深いです。

・備考
 カバー少々痛み。裏表紙折れ。pp122〜135、ページの奥にテープ痕あり。後ろの遊び紙にテープ痕、穴の破れあり。



平成27年7月14日 ページ作成・執筆

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