北野智「墓のある家」(190円)



 収録作品

・「墓のある家」
「小夜子と洋子は中学校に通う姉妹。
 下校途中、洋子が先日偶然に発見したという屋敷に、姉妹は訪れる。
 そこは廃屋と化した洋館であり、荒れた庭には多くの花が咲き乱れていた。
 母親の誕生日ということで洋子は無断で花を摘み取る横で、姉の小夜子は気が気でない。
 すると、館の窓カーテンの向こうから少女が現れ、小夜子の目をじっと見つめる。
 小夜子はその目に憑かれたように放心状態に一時陥るが、我に返ると、カーテンの向こうには誰もいなかった。
 そのうちに、二人は庭の片隅に据えられた墓に気付く。
 墓には新しく花が供えられており、二人は慌てて屋敷を後にする。
 その夜、就寝中の小夜子はふと布団から起き出すと、屋敷で出会った少女に導かれ、何処へと姿を消す。
 洋子が小夜子の不在に気付いた時、小夜子は戻ってくるが、高熱を出してその場に卒倒。
 医者の診察によると、非常に疲労しているとのことであった。
 小夜子は昏々と眠り続け、次の夜、再び姿を消す。
 洋子は姉があの屋敷に出かけたことに気付き、家族でその屋敷に駆け付ける。
 すると、二階から「マドンナの宝石」というピアノ曲が聞こえてくる。
 小夜子は誰のためにその曲を弾いているのであろうか…?」

・「死」
「豪雨の中、佐賀県唐津市から鬼塚駅で降り、地獄岬へのバスに乗り込む少女。
 彼女は高校受験の受験勉強に疲れ、自殺を決意していた。
 バスには、体格のいい、武骨な運転手、若い女性の車掌、そして、痩せこけた、気味の悪い老婆の三人が乗っていた。
 バスは出発し、雨で視界の悪い中、崖っぷちの坂道を進む。
 そんな中、老婆が少女に去年起こったことを話し始める。
 去年の今日、同じような状況の下、自殺目的の若い娘がこのバスに乗り込んでいたと言う。
 途中、地獄岬でバスは転落事故を起こすが、運よく出っ張った岩に落ち、この娘だけ瀕死の重傷を負ってしまう。
 しかし、運転手、車掌、老婆の三人は娘を病院に連れて行かず、三人がかりで地獄岬に娘を突き落としたのであった。
 この話を聞き、少女はバスから降りようとするが、バスは難所を運行中で止まるわけにはいかない…」
 マンガ版「昇天峠」(メキシコ/1951年/ルイス・ブニュエル監督)…というのはウソです、すんません。
 まあ、「閉鎖空間に少人数」タイプのサスペンス作品としては、なかなかの出来ではないでしょうか?
 個人的には、妙に心に残る、奇妙な味の逸品と考えております。

 作者の北野智先生については、私、全くわかりません。
 タイトルページにも「三竜会」というのが記されておりますが、それについても詳細は一切不明です。
 ただ、「墓のある家」に描かれている本棚に「古谷三敏」「井上智」「北の英明(ママ)」という背表紙の本が並んでおりました。(有名な方ばかりです。)
 上の先生方と何らかの交流があったのでしょうが、とりあえずは、その程度のことしかわかりません。あしからず。

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり。カバー痛み、特に、背表紙の裏に補修の紙テープ貼り付け。糸綴じ穴あり。読み癖ひどし。シミや汚れ、非常に多い。pp7・8、pp23・24、上部に欠損あり。



2016年9月5日 ページ作成・執筆

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