阿木二郎「わたしは雪女」(200円/1965年頃?)

「父親が山林保護係である都合上、福島県の山奥に住む下田一家。一家は、両親と娘の理沙の三人。
 そこは、冬は雪で閉ざされ、交通手段は雪ぞりしかないという不便な場所であった。
 ある吹雪の夜、彼らの家に、橋岡民男という青年が助けを求めて、やって来る。
 彼は大東工業の社長の息子であり、下田一家にしばらくの間、泊めてくれるよう頼む。
 父親は、家庭でトラブルでもあったのだろうと察し、滞在を許可する。
 それから、毎日、民男は林に出かけるが、理由を明かそうとはしない。
 彼が家に泊まるようになってから、娘の下田理沙は夜、外、雪の降る中で彼の名を呼ぶ、若い女性を目撃する。
 理沙の父親は民男のことを民男の両親に知らせようとするが、電話は不通、外部との懸け橋であった郵便屋は行方不明となり、一家は外界から孤立してしまう。
 雪の中で民男を呼ぶ女性は一体誰なのであろうか…?」

 このマンガでは、雪女は、美しい女で、通りかかる人に寒いから抱いてと声をかけ、抱いたら凍死してしまうのだそうです。
 そんなハニー・トラップな雪女は初見でありました。
 あとがきによると、東北の山村に語り継がれている伝説を新たに解釈したとのことです。
 もとになった伝説では、雪女は、子とる女とも言われ、夜、家族の知らない間に、赤ちゃんを外へ抱いて行き、凍えさすというというものでした。(はた迷惑ですね。)
 雪女と言えば、小泉八雲のものが有名で、他の伝説はすっかり影をひそめてしまってますが、深く探求してみると、なかなか興味深いかもしれません。(注1)
 それから、あとがきにて、小泉八雲の「怪談」の映画化の話に触れておりますので、このマンガが描かれたのは、1965年頃と推測します。

・注1
 とは言うものの、詳しく調べる暇はありませんので、当座のところは、水木しげる・著「妖怪おもしろ大図解」(小学館入門百科シリーズ・138/昭和58年8月15日初版第1刷発行 昭和61年12月1日第7刷発行)の「雪女」の図解(pp32・33)を見て、満足しておきましょう。
 幼少の頃はそれこそ本気になって、この本やらむさぼり読んでいたものですが、いい年こいても、相変わらず面白いのは何故…?

・備考
 ビニールカバー貼り付け、それによる歪みや痛み。背表紙色褪せ。糸綴じあり。前後の遊び紙に貸本店のスタンプや書き込み、貸出票の剥がし痕あり。全体に渡って、シミや汚れ多し。

2016年5月20日 ページ作成・執筆

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