宮本光「人形は生きていた」(190円/1963年12月20日頃完成)

「冬休み、佐川明子、大田町子、橋本ひろしの三人は、朝井ミキの一周忌のため、ミキの屋敷を三日滞在することになる。
 朝井ミキは屋敷の近くの湖で行方不明になったのだが、死体はいまだ上がっていない。
 屋敷を訪れた三人は、じいやとばあやにミキの部屋に案内されるが、そこにはミキにそっくりな人形があった。
 じいやとばあやはその人形をさも本物のミキのように扱い、三人は奇異に思う。
 また、驚くべきことに、その人形は言葉を話し、ピアノも弾く。
 だが、突如、ミキの人形は部屋の窓から姿を消す。
 明子とひろしはじいや達と一緒にミキの行方を探すが、一向に見つからない。
 夜更け、明子はミキの人形が森の中を歩いているのを目撃する。
 ひろしと共に、その後をつけると、人形は湖に落ちて、沈んでいくところであった。
 しかし、ひろしは人形に疑問を持ち、その夜は人形のことは黙って、屋敷に帰ることにする。
 その夜、様々な出来事で心乱され、寝付けない明子は、廊下から何者かの足音を耳にする。
 ドアを開けると、廊下をずぶ濡れになったミキの人形が歩いていた。
 人形は、自分の部屋に入ると、部屋からピアノの音が流れ出す。
 同じく、ミキの人形に気付いたひろしが鍵穴から覗くと、人形が一心不乱にピアノを弾いていた。
 ひろしはドアをぶち破ろうとするが、その時、駆け付けたじいやに鍵をもらい、部屋に入る。
 そこで、ひろしはあることに気付き、ますます人形に対する疑念を深める。
 果たして人形は生きているのであろうか…?
 そして、じいやとばあやの企みや如何に…?」

 故・池川伸治先生率いる太陽プロの最古参のメンバーの一人(らしい)宮本光(ひかる)先生。
 ひばり書房黒枠単行本で何冊か出している、宮本ひかる先生とのつながりがイマイチはっきりしなかったのですが、杉戸光史「たたりの狂女」(ひばり書房黒枠)の袖に謎を解く鍵がありました。
 宏文堂の宮本光先生は、杉戸光史先生の初期のペンネームの可能性が高いです。
 この「人形は生きていた」は、宮本光先生のデビュー作でありまして、かなり力を入れております。
 内容は、当時のスリラーにありがちな他愛のないものですが、大きな破綻もなく、まとまっているのが流石です。
 また、ひしひしと伝わってくるのが、池川伸治先生の影響の大きさ。
 読みながら、池川伸治先生の作品から「奇想」と「独特の哲学」を引っこ抜いたら、こんな感じになるのかな〜と考えておりました。

 最後に、ジャケット・イラスト、素晴らしいです。(内容と全く関係がない絵だけどね…。)

・備考
 ビニールカバーを剥がしたためか、カバーに若干の痛み。pp1・2、大きな裂けあり。前後の遊び紙にセロハンテープの跡あり。後ろの遊び紙、貸出票の剥がし痕が穴になっている。巻末の予告ページ、汚れあり。



2016年7月26日 ページ作成・執筆
2018年6月11日 大幅に加筆訂正

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