阿木二郎「海から来たマヤ」(200円)


「高野真奈美は病気療養のため、逗子の海岸にある別荘に滞在していた。
 冬の霧深い夜、ボーイフレンドの南昭(みなみ・あきら)と海岸を散歩していると、海から古ぼけたボートが近づいてくる。
 ボートには、ボロボロの布きれを身体に巻きつけた、美しい娘が乗っていた。
 真奈美は娘を別荘に招き、食事や衣服をあてがう。
 娘に話を聞くと、長い漂流生活の末、生き残ったのは彼女だけで、記憶をあらかたなくしたらしい。
 本名すらも忘れていたが、皆からマヤと呼ばれていたことは覚えていた。
 真奈美は母親に頼み、マヤを別荘の離れに置いてもらうことにする。
 だが、マヤには奇妙な癖があった。
 いつもトランクを肌身離さず持ち、急に苦しみ出した時、トランクを覗き込むと、発作が治まるのであった。
 また、機会を見つけては、浜辺で何かを探している。
 昭の気持ちがマヤに傾くのを目の当たりにして、真奈美はマヤへの不審を抱くようになる。
 マヤの正体を暴くために、真奈美は新聞社に勤める父親に頼んで、尋ね人広告を出そうと考える。
 そのために、夜の海岸で、マヤを赤外線フィルムで隠し撮りする。
 しかし、現像した写真には、マヤの顔は発光して、映っていなかった。
 それに加え、彼女の別荘に奇妙な噂が立ち、真奈美はマヤへの疑惑を深める。
 おかしなことばかりで、遂に、マヤは真奈美の別荘から立ち去ることとなる。
 だが、その夜、嵐が襲い、マヤはボートのもとに向かい、昭も彼女の後を追う。
 その隙に、真奈美はトランクを開けるが、その中身とは…?
 そして、マヤの秘密とは…?」

 まずは、宏文堂の表紙の中でも、期待そそられる、ナイスな表紙であります。
 マヤさんの正体がとっても気になるところですが、残念ながら、へっぽこです。(気になる方はココをクリック)
 表紙から半魚人っぽいのを期待していたら、過剰のダイエットの末に拒食症になったような感じでガッカリしました。
 でも、後書きにて、この作品は「SF的な少女スリラー」を狙って描かれたとあり、なかなか意欲的な作品ではあります。
 ただ、SF的と申しましても、「数年間の漂流生活の末、見る影をなくしたマヤがラジウム鉱石で美しさを取り戻す」というもので、SFと称するにはちとキビシ〜。
 しかも、そんなもんを常時携帯していて、病気療養に来ていた真奈美に健康被害はなかったのでありましょうか?
 まあ、詰まるところ、この作品の最大の魅力は「表紙」ということで…。
 あと、巻末に、あかつきただし先生の「呪いのバレリーナ―」の予告があります。(注1)

・注1
 キクタヒロシ氏の「昭和の怖い漫画」(彩図社/2017年11月22日発行)にて紹介されております。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。前後の見開きのノドに紙テープにて補強あり。後ろの遊び紙に書き込みあり。

2018年2月13日 ページ作成・執筆

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