池川伸治・宮本ひかる・松下哲也「月夜@」(200円)



 収録作品

・池川伸治「小さな墓」
「ある夜、由紀子は寝床で、蜘蛛を殺して、窓から捨てる。
 すると、夜も遅いのに、いとこの正子が東京から遊びに来る。
 だが、正子の様子はどこかおかしい。
 日光を嫌い、決して食事をとろうとしない。
 また、彼女は昨夜、由紀子が殺した蜘蛛の死骸を探し出し、墓を作っていた。
 由紀子は正子に不審を抱くのだが…」

・松下哲也「魔力少女」
「三田病院。(注1)
 三田院長が病気で亡くなったため、急患をさばけず、病院はてんてこ舞い。
 そんな時、三田院長の娘である看護婦の江梨子は、謎の声に指示され、たった一人で重症患者の手術を強行する。
 しかし、手術室の中には江梨子の他にも、もう一人、人の気配があった。
 江梨子には医師免許はなかったが、患者の処置は完璧に行われていた。
 医師の次郎は、彼女の手術に疑念を抱き、手術室に隠れて、その様子を疑う。
 彼が目にしたものは、宙に浮いて、メスを操る、院長の手袋であった…」
 作者によれば、これは「心霊治療」といい、実際にある話とのことですが、何か違うと思う…。

・宮本ひかる「灰色の部屋」
「小高い丘の上に建つ、白い西洋館。
 その館には以前、母娘が住んでいたが、母親の死後、無人となっていた。
 そして、ある春休み、大学教授の浅井国光とその娘、京子、そして、女中のキヨが滞在することとなる。
 彼らが館を訪れた初日、ドアには、この館に入ると、皆、死ぬという脅迫文が貼られていた。
 いたずらと思い、中に入ると、刺殺された猫の死体があり、またもや警告の貼紙があった。
 訝っていると、二階から謎の笑い声が聞こえてくる。
 彼らは二階をくまなく探すものの、人っ子一人いない。
 ただ一つ、牢屋のような灰色の部屋があるが、そこは鍵がなく、誰も出入りはできないらしい。
 しかし、館では、怪しい人影が彼らを見張っていた。
 灰色の部屋にまつわる秘密とは…?」

 太陽プロが結成される以前に、その主要メンバー、池川伸治先生、宮本ひかる先生(aka 杉戸光史先生)、松下哲也先生の三人でつくられた「少女スリラー短編集」シリーズです。
 三号まで確認しましたが、それ以上、発行されているかどうか定かでありません。(他の巻は見たことがないです。)
 個人的には、当時としては、斬新な内容を目指していた印象を受けました。
 特に、松下哲也先生の作品は、若干のSF風味があり、今でもまあまあ面白いと思います。

 あと、この単行本の目次には、表紙の絵師の名前が記してあります。
 「按田武志」という方なのですが、初耳で、どのような方なのか、さっぱりわかりません。(注2)
 この先生は、宏文堂の貸本表紙を数多く手掛けており、そのキュートかつイマジネイティブなイラストはアートの領域に達すると考えております。
 按田武志先生だけでなく、貸本には優れた表紙イラストがたくさんあるので、まとめて画集にしたら、喜ぶ人が多いのではないでしょうか?

・注1
 「三田」病院なのは、松下哲也先生の奥さんの、故・三田京子先生から採られたのでしょうか?

・注2
 グーグルで検索したところ、わずかながら情報があり、後年、SM雑誌の挿絵を描かれていた模様です。

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり。糸綴じあり。全体的に目立つシミや汚れ、多し。pp111・112、下隅に小欠損。後ろの遊び紙に鉛筆による落書きと貸出票の貼り付けあり。



2018年8月15日 ページ作成・執筆

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