吉倉健「怪談赤い井戸」(170円)

「元禄三年夏。
 室戸半四郎は旗本百五十石でありながら、酒と博打に溺れ、素寒貧な身の上。
 ある日、借金の返済を巡って、金貸しの江戸屋清兵ヱと口論になり、晴兵ヱを斬殺してしまう。
 そこへ折悪く、晴兵ヱの妻が半四郎の屋敷を訪ねて来て、これも同じく殺害。
 半四郎は、仕様人の甚作に命じ、二人の死体を裏庭の井戸に捨てさせる。
 その際に、口封じのために、半四郎は甚作に斬りかかり、甚作は井戸へと転落する。
 半四郎は、晴兵ヱの財布から五十両を抜き取り、残りの小銭は三度の川の渡り賃にしろと井戸に投げ込み、逐電。
 一方、井戸に転落した甚作は、傷を負いながらも、命に別状はなく、半四郎の屋敷で療養する。
 十日過ぎた夜、甚作の目の前に、晴兵ヱの妻の亡霊が現れる。
 臨月間近だった彼女は赤ん坊を産み落としており、甚作に毎日、乳の代わりの水飴を買いに行かせる。
 半年が過ぎ、春が来た頃、甚作は、中山道中津川の宿に行くよう、晴兵ヱの妻に夢の中で言われる。
 その言葉に従い、中津川の宿に向かうと、途中で半四郎とばったり出会う。
 改心しているのかと思いきや、全くそんなことはなく、半四郎は今度こそ甚作を斬殺。
 この場所にいづらくなったため、半四郎は大阪に赴くことに決めるが、甚作の亡霊が憑りつき、どうあがいても江戸の方面に行ってしまう。
 結局、自分の屋敷から離れられなくなった半四郎は、晴兵ヱ夫婦の恨みを骨身にしみて思い知らされることになる…」

 まあまあ面白いです。
 話しはきっちり筋が通っており、典型的な「怪談」でありましょう。(原作があるとは思いますが、不明です。)
 また、ショック描写も思いのほか、頑張っていて、好感が持てました。
 ラスト付近、主人公の口に蛇が入り込み、首や腹を喰いちぎって出てくるシーンはインパクト充分、なかなかステキなグロ描写です。

 ちなみに、結末は夢オチで、今までのことは悪夢だったりします。
 んで、半四郎は改心するのですが、改心したのも束の間、晴兵ヱと甚作を幽霊と見間違えて、ショック死してしまいます。
 そして、欄外には「半四郎は死んだ しかし 吉倉先生の作品はこれからだ!! 次回吉倉先生の作品にバンザイ」とのコメント。
 これって、ハッピーエンドなのか…?

・備考
 カバーに痛み、汚れあり。本文、シミ多し、特に、pp22・23・102〜107がひどし。pp22・23・100・101、ページ同士がくっついて、剥がれたところあり。pp132から最終頁あたりまで綴じ外れ。後ろの遊び紙にテープの痕あり。

2017年9月12日 ページ作成・執筆

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