横山まさみち・どやたけし「水の中の顔」(220円/1966年頃)



・横山まさみち「水の中の顔」
「孤児の太郎は、強欲なゴリおばさんのもとで暮らしていた。
 彼は釣りの名人と言われていたが、何故か、魚を釣らずに、いつも山頂の湖に出かける。
 そこの湖面には、少女の顔が映っており、彼は日がな一日、彼女を見つめて過ごしていた。
 彼が彼女に出会ったのは、彼の両親が亡くなり、自殺しようと、この湖に来た時。
 水面と藻が形作る、おぼろげな形に少女の顔を見出し、彼は死ぬことを忘れ、一日中、その顔を見つめていた。
 以来、彼が湖を訪れるごとに、その顔は明瞭になっていく。
 彼は彼女に「ミナモ」と名付け、いつしか、彼女に恋をしていた。
 ある日、湖面から、彼女の顔が消える。
 その代わりに、太郎が町に出た時、ミナモとそっくりな少女と出会う。
 彼は彼女を家につれて帰り、ゴリおばさんに彼女を家に置いてくれるよう頼む。
 ゴリおばさんは彼に今までの三倍の鯉を釣ってくるよう条件を出し、太郎はそれに応える。
 しかし、ゴリおばさんは何かとミナモをこき使う。
 太郎は、ミナモが酷使されないようするために、今までの何倍もの鯉を釣ることとなるのだが…」

・田川きよし「ある人体実験」
「ある病院にて。
 看護婦達が、新しく入って来た、鈴木という医員について噂話をする。
 世間を騒がせたチフス事件も、鈴木という医員の仕業だったし、どうにも気味が悪い。
 そこに、鈴木がやって来て、挨拶がてら、自分が作った料理を持ってくるのだが…」

・どやたけし「奇蹟売ります」
「夜更けの喫茶店。
 人生を憂う青年に、ある老人がした話。
 十年ほど前の夏、その老人の息子、宮川順は、入水自殺を図った娘を助ける。
 娘の名は駿河由美子といい、若い二人は急速に親しくなる。
 だが、夏の終わりに、順は恐ろしい事実を知る。
 由美子は進行性筋萎縮症に加え、結核にかかっており、余命幾ばくもない身体であった。
 最後に会えた日に、順は彼女をモデルに絵を描き、その夜に彼女は亡くなる。
 それから、一年後、順は毎夜、彼女を夢に見るようになる。
 同時に、彼はひどく衰弱していく。
 ある夜、夢の中で、彼は由美子に連れて行ってくれるよう頼むのだが…」

 横山まさみち先生、どやたかし先生とベテランの作品は外れがなく、さすがです。(田川きよし先生の作品はイマイチだな…。)
 個人的には、横山先生の「水の中の顔」は「民話」といった雰囲気があり、異色作だと思います。
 あと、扉絵は、藤原栄子先生です。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。水濡れによる本体の歪み、また、シミあり。後ろの見開きに貸出票の剥がし痕あり。

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