作者不明「秘境の戦慄」(150円)



・作者不明「秘境の戦慄」
「東京に突如、現れた原始人。
 原始人は岸探偵に射殺されるが、その手にはなめし革の切れ端が握られていた。
 太古研究学者の谷川博士は、その革に記された文字を解読し、帝王山の奥地に原始人の部落があり、そこに「死と生の神」が祀ってあることを知る。
 博士達の一行は帝王山の奥地に向かうが、そこはすでにもぬけの殻であった。
 一か月後、探検隊は引き上げるが、谷川博士は、山案内人の老人、料理番の老婆と共に現地に残り、ある日、遺跡の調査の際に、隠れ階段を発見する。
 その階段を下ると、広場に出て、そこには太古墓石が立ち並んでいた。
 太古墓石の文字から、博士は神石の洞窟のありかを突き止める。
 神石の洞窟の奥には石像があり、その口の中にある神石を博士が触ると、手に火傷をする。
 帰宅後、博士は、岸探偵に神石の洞窟について手紙を書き、こちらに来るように誘う。
 岸探偵は所用があったため、彼の妹、マリ子、岸の友人である勇、谷川博士の息子である秀夫の三人は先に出発。
 博士の研究所を訪れるが、谷川博士と料理番の老婆は原始人に襲われて死亡しており、、また、山案内の老人の重傷を負う。
 翌日、勇とマリ子が博士と老婆の死体を火葬する間に、またもや原始人の襲撃があり、山案内の老人も亡くなり、秀夫はさらわれてしまう。
 キングという犬のおかげで、勇とマリ子は秀夫が監禁されている地下牢を発見。
 二人は彼を縄梯子で救出しようとするが、縄梯子の番をしていた勇が原始人に襲われ、彼らは窮地に陥る。
 彼らは原始人の部落から生きて脱出できるのであろうか…?」

・作者不明「そこを動くな」
「明治二十年頃。
 講道館柔道の創始者、嘉納治五郎は各地に分館を作り、札幌の武道館には島田三段を派遣する。
 だが、突如として、彼と音信不通となったため、半年後、島田の後輩、早川進吾を北海道に向かわせる。
 彼は札幌に着くが、武道館は荒れ果て、しかも、島田は半年前に亡くなったという。
 死因は川に落ちての溺死らしいが、島田は泳ぎが達者だったはずで、どうも腑に落ちない。
 しかも、島田の死について、町の人々に尋ねても、皆、顔色を変えて、口ごもるばかり。
 いろいろと調べるうちに、札幌には赤鼻一家というならず者がおり、島田は赤鼻達ともめ事を起こしたことがわかる。
 島田は赤鼻の子分を片端からやっつけるが、赤鼻は、死神のような柔術使い、寒川清一郎を雇い、島田を殺したらしい。
 それを知った進吾のところに、寒川清一郎から果たし状が来る。
 進吾は、先輩の島田の仇を討つために、大川端の河原に向かう。
 だが、果たし状は、赤鼻悪三によるものであった。
 赤鼻悪三は、寒川を始末しようと考えるだが…。
 また、進吾と同じく、島田の死を調査する青年の正体とは…?」

 120ページ程度の作品が二つ、収録された単行本です。
 「秘境の戦慄」はタイトル通り、「秘境もの」です。
 日本の中に秘境があるというのはまだ納得できますが、その住民が原始人(武器は石鎚と弓矢)というのが何とも…。
 このガキ大将を野生化させたような原始人の描写が何かにつけ味わい深く、そんな原始人とのバトルは(今現在から見ると)拍子抜けするぐらい、のどかで、この「もったり感」がクセになりそうです。(注1)
 ちなみに、自分達が原始人達の部落に土足で踏み込んでいるにも関わらず、原始人達を悪役として描くのには釈然としませんでした。
 悪いのは「文明人」の奴らなのにね…。

 「そこを動くな」は柔道漫画です。
 当時の柔道漫画の影響があるのかもしれませんが、私は高校の時の授業で柔道が嫌いになりましたので、どうでもいいです。

 この単行本、どこを調べても、作者の表記がなく、二作品とも、作者は不明です。
 もしも、御存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示いただけますと、幸甚の至りであります。

・注1
 西部劇の影響がかなり大きいようです。
 西部劇が日本漫画に与えた影響を誰か調べてみては如何でしょうか?
 私は西部劇が嫌いなので、パス。

・備考
 カバー欠? 本体に痛み。小口の貸本店のスタンプ押印。

2021年6月18日 ページ作成・執筆

貸本・その他の出版社・リストに戻る

貸本ページに戻る

メインページに戻る