いばら美喜・他「怪奇S」(150円)



・いばら美喜「お出迎え」
「友人宅に向かう途中、山中で日暮れを迎えてしまった青年。
 こうなったのも友人が彼を迎えに来てくれなかったせいであったが、よくよく友人からの手紙を見ると、約束の日付を間違えていたのは青年であった。
 通りがかった、気の良さそうな老人の勧めにより、老人の家に一晩厄介になることとなる。
 家には老人とその娘が住んでいたが、この娘はどうもまともでない。
 夜中、悲鳴が聞こえ、青年が様子を見に行くと、若い女性が手足を縛られて、宙吊りにされていた。
 そこに現れた、老人の娘が、女性の喉笛に噛みついて、血を吸う。
 青年は逃げ出そうとするが、罠にかかり、彼も宙吊りにされてしまう…」
 薄い青色で印刷されておりまして、読む時に目がつらいです…。

・しんどう秀章「スリラー小話 幽霊を見た夜」

・深代博志「呪いの血」(1961年4月頃完成)
「殺し屋のサブは、依頼により、黒沢という男を殺す。
 すると、サブの周囲で次々に怪奇現象が起こり、サブは黒沢に呪われていることを知る。
 そんな時に、麻薬の取引の仕事がサブのもとに舞い込んでくる…」
 陳腐な内容をバッド・テイストな描写でカバー…いいですよね〜。

・イナズマ太郎「見た」
「あるホテルを訪れた探偵。
 彼は因縁つきの部屋を指定して、そこへ泊まる。
 急な睡魔に襲われて、探偵は居眠りをするが、誰かに話しかけられ、目を覚ます。
 声の主は、ホテルの支配人に邪魔者として殺された男の亡霊であった。
 男の亡霊は支配人に裁きを受けさせるまで成仏できないと言い、探偵に下の階で取引があることを教える。
 探偵が下の階に潜んで行くと、そこでは…」

・慎胴秀章「人間アンテナ」
「ある漫画家の家の前に面している墓場。
 夜中、彼は墓場に異様な光を見る。
 双眼鏡で覗き見ると、ある墓の周囲に人魂が浮かび、急に墓石が爆発。
 すると、彼の前に、片目の女の亡霊が現れて、自分の死の真相を語る。
 一年前、彼女は、保険金目当ての夫のために、断崖から突き落とされて、殺されたのであった。
 彼女は夫への復讐のために、明晩11時30分に夫のアパートの部屋で、夫の帰りを待つように漫画家に頼む。
 そして、女の亡霊は、漫画家に部屋の鍵を渡すのだった…」

 ひばり書房の「怪談」シリーズの大ヒットを受けて、柳の下のドジョウを狙ったと思われる、あかしや書房の「怪奇」。
 恐ろしく、出現率が低く、余程の上級者でないと、全貌は捉えられないのではないでしょうか。(コンプリートしている人って存在してるの…?)
 状態が極悪なものを三冊所有しているだけなので、推測の域を出ないのですが、いばら美喜先生を看板にしていたようです。
 この本に収録されている「お出迎え」も、「怪談」シリーズに描かれた作品を彷彿させる出来で、かなり面白く、かつ、ヘンです。
 とはいうものの、個人的なベストは慎胴秀章先生の「人間アンテナ」なのであります。
 ストーリーにはほとんど関係のない、意味不明な怪奇描写の継ぎはぎだけでストーリーが進行しており、正直、デタラメなマンガであります。
 が、回想で描かれる、夫による妻殺しの描写はかなり凶悪。この悪趣味さが私のハートを(不整脈のように)ビンビン震わせます。
 ここまで人間の「業」を活写したシーンはなかなかお目にかかれないと個人的に考えるのですが、単に私の趣味が悪いというだけの話かもしれません。

・備考
 状態非常に悪し。カバー欠。表紙が本体から外れそう。pp7〜24(いばら美喜作品のほとんど)、pp87・88、107・108(慎胴秀章作品)、コマにかかる大きな裂けあり。pp11・12(縦3センチ×横2センチ)、pp17・18、pp23・24、コマにかかる欠損あり。pp9・10、コマにかからない欠損あり。pp14〜16、20〜24、74〜88、シミや汚れひどし。

平成27年12月28・30日 ページ作成・執筆

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