佐藤まさあき「夜は血のにおい」(240円)



 収録作品

・「夜は血のにおい」
「休暇中の結城刑事のもとにかかってきた一本の電話。
 それは、彼が逮捕した強盗殺人犯、鬼村光二が脱獄したという知らせであった。
 鬼村は派出所を襲い、警官を殺害し、拳銃を奪った後、結城の家に向かう。
 彼は結城の妻を拳銃で脅し、結城刑事の帰りを待つ。
 鬼村の恋人は、結城刑事により彼との関係を世間に知られ、それを苦に自殺していた。
 彼女の復讐のため、鬼村は、結城の妻を彼の前で射殺し、次に、結城を殺害しようと目論む。
 結城の妻はこのことを夫にどうにか知らせようとするのだが…」

・「疑惑」
「父の死の知らせを受け、二年ぶりに実家に戻ってきた青年、大徳広司。
 彼は義母から父の死因が心臓麻痺と聞き、違和感を覚える。
 父親は健康そのものだったし、彼への知らせが遅れたのもおかしい。
 また、彼女は水商売出身で、地方の大地主である父親との結婚はかねてから財産目当てと噂されていた。
 そして、彼女への嫌悪から彼は家を出て、上京したのである。
 父親の死に疑惑を抱き、彼は、父親の死亡診断書を書いた医師を訪ねるのだが…」

・「暗い日曜日」
「小さな医院の院長である亀田医師。
 彼は、医院を近代的な建物に建て直すために、医療用の麻薬を暴力団に横流ししていた。
 このことを看護婦の中沢のり子に知られ、彼は彼女に結婚の約束をする。
 だが、彼には、大学の恩師の令嬢との縁談が持ち上がっていた。
 のり子は彼に女ができたことを鋭く察知し、約束の履行を迫る。
 追い詰められた彼は、ある日曜日、彼女と共に飯尾山にピクニックに出かけるのだが…」

・「遠い旅」
「現代社会の歪なシステムを嫌悪する青年。
 彼は、デパートの「明治百年展」を観た際、ある写真に目が釘付けになる。
 それは当時の新橋あたりの情景で、群衆の中の一人の娘に彼はこの現代で失われた「人間性」を見出す。
 彼はその少女に激しい恋心を燃やすものの、二人の間に横たわる時間と空間をどうすることもできない。
 彼はどんどん自堕落になっていくが、彼の想いが頂点に達した時…」

 表紙からは怪しげなオーラがむんむん漂ってきてますが、基本「サスペンス・スリラー」で、怪奇色はありません。
 ただ、「遠い旅」はちょっぴり甘めな幻想譚です。(ニヒルな主人公のウダウダ感溢れる独白がウザいですが…。)
 一つ疑問に思ったのは、この頃の作品には、川崎三枝子先生のアシスタントが入っているんでしょうか?
 三白眼な男のキャラと、若干ケバい感じのある美女キャラとのギャップがたまりませんね。

・備考
 カバー痛みあり、背表紙の上部に欠損。糸綴じあり。一部、目立つシミあり。

2019年4月22日 ページ作成・執筆

貸本・その他の出版社・リストに戻る

貸本ページに戻る

メインページに戻る