芳谷圭児「白猫の唄」(130円/1958年5月25日発行)



 収録作品

・「白猫シリーズ第一章 木枯」
「藤城家では代々、子供が十歳になると行方不明になったり、記憶喪失になったりしていた。
 五年前、この家の唯一の後継ぎであるエリもまた十歳の時に行方不明になる。
 心配のあまり、両親は病気で亡くなり、乳母がエリの行方を捜していた。
 藤城家の財産は「五百億万円(原文ママ)」あり、遺産目当ての連中が大勢やって来る。
 皆、偽物であったが、唯一、エリ本人に関係するらしい情報が手に入る。
 エリは女義賊として有名な「白猫」の屋敷で暮らしていた。
 一月前の夜、記憶喪失のエリが車道にさまよい出たところを、白猫たちの車がはねてしまう。
 白猫は彼女をアジトに連れ帰り、彼女を藤城エリに仕立てることを思いつく。
 白猫の仲間の健二はエリの教育を担当するが、そのうちに二人は相思相愛になり…」

・「白猫シリーズ第二章 死神屋敷」
「ある村の湖の前に建つ「死神屋敷」。
 十年前、この村に一人の若者が来て、村の娘と結婚し、屋敷を建てて住む。
 女児に恵まれ、幸せな日々を過ごしていたが、冬のある日、若者の友人の黒山が屋敷を訪れる。
 黒山は若者から金を巻き上げると射殺し、逃亡。
 若者の妻は湖にとび込み自殺をし、その夜、雪崩が屋敷を圧し潰してしまう。
 だが、春になり、雪が解けると、屋敷が再び立っていた。
 以来、この屋敷は「死神屋敷」、湖は「死神湖」と呼ばれるようになる。
 そして、十年後の冬のある日、白猫がこの村にやって来て、老人の家に泊まる。
 そこに黒山が現れ、老人に「死神屋敷」に案内するよう脅すのだが…」

・「白猫シリーズ第三章 拳銃と十字架」
「フランク鉄児は凄腕の金庫破り。
 だが、彼は唯一の肉親である妹のマリのことを考え、カタギになる。
 「白猫」主催のパーティの後、彼が妹のもとに帰ろうとすると、ボスのヘンリー倉人が話しかけてくる。
 ヘンリー倉人は今夜、金庫破りを手伝わないかと持ちかけるも、鉄児は拒否。
 そこでヘンリー倉人はあるスリを使い、鉄児から船の切符と持ち金をすらせ、切羽詰まった鉄児はヘンリー倉人を訪ね、依頼を受ける。
 一方、白猫は鉄児が妹のもとにいないことを知り、仲間と共に彼の行方を捜すのだが…」

・「KEIJI名作劇場No.1 うた物語 トロイカ」
「舞踏会に行こうと、高飛車なお嬢様、マーニャが下男のイワンをむりやりに吹雪の中を馬車を走らせ、二人とも凍死する話」

 芳谷圭児先生(1937〜2021)の初期の貸本作品です。(wikipediaによると、1954年にデビューとのこと。)
 女義賊(と言うより女ギャング)の「白猫」を主人公としたシリーズとのことですが、続巻があるかどうかは不明です。
 基本、当時流行していたギャングものの影響下にある内容だと思いますが、「死神屋敷」は幻想的な怪奇もので、かなりの力作です。
 他の作品も今読んでも、まあまあ面白く、いろいろと工夫したり凝っている部分もあり、作者のポテンシャルの高さを感じます。

・備考
 状態悪し。全体的に痛みひどし。背表紙ボロボロ。中割れ激しい。巻末の見開きに落書き。

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