「しらかば増刊 少女スリラー」(150円)



 収録作品

・沢いずみ「みなしごマリ」
「マリは孤児で、屑やの松田源二の世話になっていた。
 だが、源二は競輪に凝っていて、家にお金を入れない。
 ある日、パン屋から現金とパンを盗んだ疑いがマリにかかる。
 警官から逃げる途中、マリは工事中の橋から川に転落。
 意識を失った彼女の前に、黒づくめの少女達が現れる。
 彼女達は「川で死んだ子」で、マリを「死の世界」に引きずり込もうとするのだが…」

・美鈴紅二「白い小ゆびの幻想」
「信州の高原にあるサナトリウム。
 そこに原(並木?)美奈子という少女が療養していた。
 唯一の肉親である姉は美奈子の世話を甲斐甲斐しくするものの、このままでは入院費が足りない。
 そこで、東京に働きに出ようと考えていると、美奈子は敏感に察知する。
 姉は美奈子と指切りをして安心させるが、それは美奈子についた最初で最後の嘘であった。
 美奈子は東京に出た姉の帰りをただただ待ち続ける。
 三月過ぎ、美奈子は東京の姉を思うと、いてもたってもいられなくなる。
 彼女は東京に行きたい一心で、病室を抜け出し…」

・黛ひかる「まぼろしの少女」
「ゆみ子は、両親を亡くし、姉と二人で暮らす少女。
 三日後にバレー公演を控えていたが、衣装が間に合うかどうかわからない。
 彼女は公園のマリア像の前で祈り、帰ろうとした時、サチ子という少女とぶつかる。
 サチ子は、母親が家を出た後、父親が結核で亡くなり、母親が見つかるようマリア像に祈りに来たのであった。
 ゆみ子は自分よりも不幸な境遇に同情し、サチ子の服が破れていたので、彼女の服を着せようとする。
 サチ子は「私は乞食じゃないのよ」と怒るが、二人はすぐに和解して、友達となる。
 公演の前日、サチ子の母親がゆみ子の家にやって来て、お世話になったお礼と豪華な衣装を贈ってくれる。
 サチ子は少し風邪気味で、家で寝ているらしいのだが…」

・松本あきら「谷にきえた久美」
「久美とみどりは双子の姉妹。
 母親が病気の療養をする間、姉妹は伯母の経営する、もみじ平高原の山の上ホテルに滞在することとなる。
 ホテルには東京から来た十三人の若者もやって来て、なかなかの賑わい。
 若者達のリーダーは霞不二雄という青年で、会社社長の息子であった。
 彼は他の若者達と違い、ひどくクールで、「きみのわるいうわさ」があるらしい。
 久美は彼からひそかに手紙を渡され、夜の十二時、庭で彼と会う。
 同じ頃、目を覚ましたみどりは雨の中、二人が庭にいるのを目にする。
 不二雄は「まよいの谷」に行かなくてはならず、久美にそこに行きたくないかと尋ねていた。
 翌日、久美は「まよいの谷」について調べようとするのだが…。
 そして、不二雄の秘密とは…?」

 本書最大の目玉は、松本あきら(aka 松本零士)先生の名作「谷にきえた久美」。
 青池保子先生の名作「死の谷」に影響を与えたと聞いております。(でも、どこで聞いたのか失念。)
 詳しいことをお知りになりたい方は「MANGA」さんの素晴らしいアメーバ・ブログ「『りぼんカラーシリーズ』&『昭和の少年少女雑誌』」にて扱われておりますので、ご一読をお勧めいたします。
 ちなみに、個人的に一番心惹かれるのは、沢いずみ「みなしごマリ」です。
 川で死んだ少女達の霊の描写は、緩いところが逆に悪夢的なムードを醸し出していて、唸らされます。

・備考
 カバー欠。前後の遊び紙に、少女のものらしき拙い落書き(心洗われます)。

2022年9月23日 ページ作成・執筆

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