黒田みのる
「青いノア@」(1982年3月17日第一刷発行)
「青いノアA」(1982年4月20日第一刷発行)
「青いノアB」(1982年6月27日第一刷発行)


単行本@
・「第一章 窓」
 西尾アヤは中学一年生の女の子。
 彼女はいつも「お金があればいいのに…」という不満を抱いていた。
 ある朝、彼女は眩しい光で目を覚ます。
 すると、部屋が彼女の理想通りのゴージャスな部屋になっていた。
 窓からは広い庭が見え、机の引き出しには札束がぎっしり。
 夢のようだと呆然としていると、現実の部屋に戻る。
 彼女は今、見たことを母親に話すが、彼女の「何でも金やがな」という口ぶりに母親は泣きだしてしまう。
 アヤがふてくされていると、窓の外を「青い水」がどんどん流れてくるのに気づく。
 そこに、父親が彼女を叱りに部屋にやって来るのだが…。
・「第二章 鏡」
 翌日、アヤの家族(両親とアヤ、妹のヒデ子)は中華料理を食べに行くこととなる。
 レストランで父親と待ち合わせるが、父親はなかなかやって来ない。
 アヤが外に様子を見に行くと、レストランで水の入ったコップから「青い水」が噴き出ているのが見える。
 その後、アヤがヒデ子をトイレに連れて行くと、洗面台の所で千円札を拾う。
 更に、鏡の中に、文学賞を受賞した彼女や、スター歌手になった彼女の姿が視えるのだが…。
・「第三章 庭」
 休日、西尾アヤは友人の丸井弓子とお出かけをする。
 途中、「青い水」について話し、弓子は「青い水をみると お金がはいる」のではないかと推測を述べる。
 二人が目的地の映画館の前に着くが、長蛇の列であった。
 あきらめかけたところ、アヤはある映画館が「青い水」に包まれているように見える。
 その映画館に向かい、誘われるように裏口への通路を進むと、金魚鉢を持った女性とぶつかる。
 女性は二人を見て、今度つくる映画のヒロインにぴったりだと言い、二人に名刺を渡す。
 女性は有名な「水プロ」の社長であった。
 次の日曜日、アヤと弓子は水プロを訪れる。
 水プロの本社は、町中から離れた、川に挟まれた場所にあった。
 更に、池や庭、本社の中には水槽もたくさんあり、その水は全て青い。
 二人は社長に応接間に通され、天井を見るよう言われる。
 天井には、「女神さま」の姿があった。
 社長は二人に霊魂には三つの種類があることを話す。
 それは「火の霊魂」「水の霊魂」「土の霊魂」で、アヤと弓子は「水の霊魂」の持ち主らしいのだが…。
・「第四章 火」
 アヤと弓子は水プロでカメラ・パスをする。
 二人は何故だかわからないが、そのことが妙に不安で家族には秘密にする。
 八日後、アヤが寝る前に水を飲もうとすると、水道の蛇口から「青い水」が出る。
 アヤは、これでアイドルになるためのお金が手に入るのではないかと考えながら、眠りに就く。
 彼女はある夢を見るのだが、その中で、アヤの家族は「青い水」の洪水に襲われ、父親が食い止めるべく、一人で立ち向かっていた。
 アヤが目を覚ますと…。

単行本A
・「第一章 噂」
 保険金で、アヤが「水プロ」のタレントになったという噂が立つ。
 アヤは気にしてはいなかったが、ある日、帰宅すると、母親の様子がおかしい。
 母親には亡くなった父親の霊が憑依していた。
 父親の霊はアヤに「水プロ」をやめるよう命じ、「青い水はもっとおそろしい」と告げて、消える。
 母子三人が戸惑っていると、窓の外、曇り空から青い水が降るのが見える。
 青い水はすぐに消えるが、その時、電話が鳴る。
 電話は弓子からで、日本でトップクラスの映画監督が病気で倒れたという知らせであった。
 見舞いのため、アヤは映画監督の家の前で弓子と待ち合わせるのだが…。
・「第二章 影」
 アヤは映画「水車の影」のヒロインに抜擢され、撮影に入る。
 若手カメラマンの池上進は彼女が映画に出るのが不服らしく、アヤは社長に彼との付き合いを禁じられる。
 また、弓子との仲にも隙間風が吹き始める。
 それは社長から二人が水の霊統と教えられた時からのようで…。
・「第三章 水」
 主演映画撮影の合間に、アヤは家庭用料理油の新製品の宣伝に出演する。
 この出演に関しても、池上進は反対していた。
 その理由を説明するため、進は学校の校門で彼女を待ち、アヤとどこかに歩み去る。
 二人の後姿を見て、弓子はもやもやしたものを感じる。
 林の中であれこれ考えを巡らしていると、女友達の一人が現れる。
 彼女は、弓子から「水の霊魂」の話を聞いてから、弓子のことが好きになってしまったと話す。
 でも、アヤは「水の霊魂」でないので、嫌いであった。
 雨が降り始め、弓子と彼女の友達は「水プロ」へと向かうと…。
・「第四章 風」
 アヤがCMに出演した油会社が火事を起こし、多数の死傷者が出る。
 そのニュースを聞いて、アヤは「青い水」を見たせいだと泣き出す。
 池上進によると、事故は「水の霊魂でないものが青い水をみた」せいらしい。
 その夜、アヤと池上進は「水プロ」へと向かう。
 「水の霊魂」でないアヤを「水プロ」がスターにしようとする理由を探り出すためであった。
 水プロの本社の中で、二人は「水の女神」と出会う。
 「水の女神」はアヤが選ばれた理由を説明するのだが…。
 そして、池上進の正体は…?

単行本B
・「第一章 舟」
 アヤは「火の霊魂」の持ち主であった。
 また、池上進は「火の神」だと明かし、「水の女神」とどちらが優れているか口論する。
 アヤが不毛な論争を止めるよう涙ながらに懇願すると、天井から「ノアの方舟」が現れる。
 「ノアの方舟」は時間を戻し、アヤに「もう一度考えてごらん」と言う。
 口喧嘩がもう一度繰り返されていると、突如、天から眩い光が差してくる。
 これは「大元の神」の光で、彼らの前に「大元の神につかえる火の神たち」が現れる。
 アヤは、圧倒的な光量にもひるまず、「大元の神」に姿を見せるようお願いをする。
 すると、光の束がアヤを包み込み、彼女の身体は光の中に溶けていく。
 「大元の神」は光そのもので、「すべては左まわりでのぼっていく光の波の渦でつくられた」のであった。
 「大元の神」が去った後、光の粒が集まり、アヤの身体が再構成される。
 その後、火の神たちはアヤに「三つの霊魂のこと」、そして、「天地創造」について語る…。
・「第二章 スター」
 映画の撮影が終わり、アヤは今度は時代劇に出演する。
 人気は急上昇で、公開された映画も大ヒット。
 スターへの階段を上がり始めたアヤであったが、池上進や弓子達は彼女に冷たくなっていた…。
・「第三章 水」
 アヤは、自分と家族、池上進が青い水の洪水に飲み込まれる夢を見る。
 しかも、妹のヒデ子もアヤと同じ夢を見ていた。
 夢の話をしていると、母親に、父親の霊が憑依する。
 父親の霊は「火の霊統はあの青い水にやられる」と告げ、「水の神さまたち」の企みについて話す。
 アヤは、火と水は助け合うと聞いていて、反論するが、父親の霊は彼女がだまされていると繰り返す。
 その場に現れた池上進も、アヤに引退するよう勧めるのだが…。
・「第四章 土」
 弓子達に呼ばれ、午後七時、アヤと池上進は「水プロ」の本社にやって来る。
 二人は中に招き入れられ、「水プロ」の社長と面会する。
 社長はアヤから「火の霊魂」を取り去ろうとするのだが、その理由とは…?
 自分の身が危険にさらされながらも、アヤは必死になって、火と水が調和するよう訴える。
 すると、水の女神の真の姿が明らかとなる…。
 実は、一連の出来事には「水の神」「火の神」以外に「土の神」も関与していた…」

 黒田みのる作品の中でも、芸能界を舞台にした異色作です。
 妙チクリンな心霊現象に振り回されながら、ヒロインはスターへの道を進んでいきますが、三巻でいきなり怒涛の「天地創造」の解説に突入して、あまりの壮大さにあっけにとられます。
 まあまあ面白い内容だと思いますが、「※※」(ネタバレ防止のため伏字)が出てくるラストが、「大元の神」が出てくる章と矛盾しているように思います。
 「※※」が神の光を浴びたら、死んでしまうのでは?

2022年5月1〜3日 ページ作成・執筆

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