黒田みのる「残酷な美貌」(1990年10月25日第1刷発行)
収録作品
・「魑魅魍魎の女たち」
「ある出版社の本石節子は、今を時めく西川女社長にインタビューをする。
その際、社長の夢を聞くと、西川は、節子のように若くなりたいと話す。
しかも、エステとかではなく、月に一度、二十代に若返れるらしい。
西川は節子にこの秘密を教えようと、翌日の夜、会う手はずを整える。
その夜の待ち合わせ場所に現れたのは、若く美しい女性であった。
女性は西川と名乗り、二人の間でしかわからないことを知っている。
食事の後、節子は、人里離れた場所にある家の前に連れてこられるのだが…」
・「切歯扼腕の勝利」
「創業三十年の貝塚出版は、オカルト・心霊に関する本を多く出版していた。
しかし、講演会の壇上で、社長は急死する。
社長の一人娘、貝塚恵子はカルチャーセンターで料理を講師をしていたが、悪魔や邪霊の本ばかり出すことに反対で、専務の山崎が社長の椅子を継ぐよう頼んでも、固辞する。
山崎は恵子を社長に就任させ、その後、彼女との結婚をもくろんでいた。
失望した彼は偶然に、カルチャーセンターの会長である婦人と出会う。
彼女は自分に任せるよう言い、彼女が手をまわしたお陰で、恵子は新社長へと就任。
その後、邪神や悪魔に関する攻撃的な本が次々とヒットするのだが…」
・「アシスト・みどり 第1話」
「都心に近いT市の郊外に、レディース・コミック界で活躍する松原レイの仕事場兼住まいがあった。
ある日、アシスタント希望の鳥海みどりという女性が松原レイを訪ねる。
みどりのことは、一年前、恩師である高校の美術教師、泉田に頼まれていた。
みどりは暗く、不気味なムードがあり、三人のアシスタント達は拒否反応を起こす。
しかし、みどりには実力があり、また、恐ろしく高圧的な態度で、松原レイもアシスタント達も編集者も圧倒する。
ただ、松原レイは最初、みどりがやって来た時、ドアにチェーンがかかっていたのに、どうして入って来れたのかが気になっていた…」
・「アシスト・みどり 第2話」
「編集部に原稿を届けさせた際、松原レイはみどりに、チェーンの件について問いただす。
そこに、泉谷先生から電話がかかってくる。
松原レイが電話に出ると、レイと三人のアシスタント達は急な眠気に襲われる。
気が付くと、そこはレイの故郷にある光ヶ丘で、泉谷先生の姿があった。
泉谷先生に案内され、彼女達は光ヶ丘を降り、町に入る。
木村病院にみどりがいると言うのだが…」
・「アシスト・みどり 第3話」
「病院で、みどりは自分の正体を明かす。
そして、泉谷先生と共に、レイとアシスタント達への復讐を開始するのだが…」
・「見えない世界 心霊質問箱 解答・黒田みのる」
「古くて汚れた人形を捨てても大丈夫ですか」
・「雨ともだち」
「晩秋の閑散としたリゾート地。
ただ一軒だけ、田宮家の母娘が一か月前から滞在していた。
母親は後妻で、娘の理加は若干、知恵遅れ。
ある雨の日、理加が裏山から帰ってくる。
母親が迎えに行くと、雨は二人のいるところだけ降っており、しかも、雨雲が追って来る。
家に入って、しばらく経つと、雨はやんでいた。
母親が理加にどこに行っていたのか尋ねると、裏山に住む女性のところに遊びに行っていたと答える。
だが、どう考えても、そこは人が住めるところではなかった。
その夜、母親が夕食を呼びに理加の部屋に行くと、理加の姿がない。
外には出られるわけがなく、部屋の中を捜していると、理加は入り口のドアを通り抜けるようにして入ってくる。
驚く母親に、これは裏山の女性に教わったと理加は言い、母親を部屋から追い出す。
その夜、停電の中、主人と彼の友人で精神科医の広江が別荘に来るのだが…」
・「残酷な美貌」
「見たこともない父親の遺産で、美奈は英国風の屋敷を手に入れる。
ある日、彼女がその一室でうたた寝をしていると、夢の中に外国人の少年が現れる。
少年は剣でもって彼女の両目を抉り取り、鼻を切断し、美奈が苦悶していると、夢から覚める。
顔は全くの無傷であった。
その夜、美奈は都心の喫茶店で、友人達と出会う。
友人達は、今はお嬢様の美奈の身の上をうらやみ、更に、目鼻立ちが良くなったと激賞する。
それから一週間後、美奈が皿洗いをしていると、見知らぬ外国人の青年が現れる。
彼は、この前、夢の中に現れた少年で、今度は、剣で彼女の口元を抉り取り、頭に剣を突き刺す。
これは「この家に住むすばらしい女性になるための」作業らしいのだが…。
この青年の正体は…?」
三話にも及ぶ「アシスト・みどり」が目玉でしょう。
三話目の壮絶な復讐には爆笑…いや、戦慄してしまいます…。
「残酷な美貌」もヘンな話ですが、結末が「血も凍るようなわけがあってまだ描けない」とごまかしているところが不満です。
2022年12月28・29日 ページ作成・執筆