黒田みのる「大誕生」(1991年9月20日初版発行)

・「大誕生 PART.1」
「東日本に位置する、山に囲まれた小さな町。
 そこの病院のベッドで上林美奈(22歳)は臨終を迎える。
 彼女の幽体はオーラに包まれて額から脱け出て、オーラの紐がよじれて切れた時、彼女の身体は死を迎える。
 その後、彼女の肉体からは憑依霊たちが次々と浮かび出てくる。
 憑依霊たちは彼女の先祖に恨みを持つ者たちで、彼女を長い間、苦しめてきたが、彼女の死後、生前の肉体生活を懐かしむ。
 一方、美奈の幽体は死者の国に出発する。
 小舟に乗って、彼女は川を進み、岸に着くと、遠くに見える白い光に向かって進む。
 その草原には白い光に向かって進む大勢の人々がいた。
 彼女の幽体は宙を飛び、白い光の中にとび込むと、心地よさに包まれ彼女は眠る。
 彼女の幽体からは生前の彼女の面影がどんどんなくなっていき、幽体の『原型』となり、そして…」

・「大誕生 PART.2」
「光の降り注ぐ草原の中で、上林美奈の幽体は『原型』へと戻る。
 彼女は自由に翔び、舞い、走り、跳ぶ。
 トレーニング期間が過ぎた後、彼女の幽体から突如、粉雪のような細かい光が吹き出して、彼女の幽体は幼児のかたちとなる。
 彼女が顔をあげると、草原を囲む白い峰々から血のようなものが立ち昇っていた。
 彼女は両手を前に突き出すと、掌から短い波長の光が出て、赤い血を出す峰の麓にある洞窟に向かって進む。
 その洞窟は女性の子宮とつながっており…」

・「大誕生 PART.3」
「浩二と優子は待望の赤ん坊が授かる。
 だが、妊娠から五か月目、浩二は倒産を理由に優子に堕胎を勧める。
 優子の気持ちは揺れるが、この裏では、堕胎させようとする憑依霊たちと子供を産ませてとり憑こうとする浮遊霊たちのせめぎ合いがあった…」

・「大誕生 PART.4」
「透と良子の夫婦は二人の子供(浩と理加)に恵まれていたが、二人の間には秋風が吹きつつあった。
 ある日、透は義母と話す機会を得る。
 義母は透と良子の間の不仲を薄々察していた。
 彼女は透に自分の「きつい性格」を打ち明け、今は亡き夫への憎しみを語る。
 そして、母親の「きつい性格」は良子にも受け継がれていた。
 更に、義母は自分の血に流れる『霊物質』について話す。
 若い頃は先祖の『霊物質』が大半を占めるが、歳を取るにつれて、自分の経験から生れた『霊物質』が増えてくる。
 そして、この『霊物質』は肉体が滅びると…」

・「大誕生 PART.5」
「杏奈と明彦は恋人同士で、彼女は妊娠三か月。
 明彦とその家族は結婚を望むが、杏奈には事故で痴呆状態になった父親がおり、堕胎し結婚をあきらめようと考えていた。
 夜、彼女のもとに死んだ母親の霊が現れる。
 母親の霊は杏奈に子供を産むことを勧め、杏奈の半生を振り返らせることによって、「見えない世界」から見た「赤ちゃん誕生の大システム」について教える…」

・「大誕生 PART.6」
「(PART.5の続き)
 母親の霊の次に、先祖霊が出てくる。
 先祖霊は『輪廻』について説明し、この輪廻が『究極の肉体ででき上っている肉体と超高度な精神をもった人間に進化するため』の『巨大なプログラム』だと話す。
 杏奈の決断は…?」
(上巻にPART.1〜3、。下巻にPART.4〜6)

 稀に見る大奇作です。
 黒田みのる先生が『人間誕生の大システム』に真正面から挑んだ作品で、そんじょそこらの陳腐な宗教マンガなんか遥かに飛び越え、壮大かつイマジネーションに満ちた内容になっております!!
 もちろん、黒田みのる作品ですので、教義のクセが強く受け入れない方も多いとは思いますが、この力業の前では、当たりはずれなどどうでもよくなり、圧倒的な世界観に驚嘆するばかり。
 「赤ちゃん誕生のメカニズム」につきましては複雑なので説明は割愛いたしますが、幼児型の幽体が『光のゾーン』(=子宮)へ入っていくシーンは妙にドラマチックで、有無を言わせぬ熱量があります。(余程、強調したいのか、何度も解説され、若干、くどいですが…。)
 また、巻末には「見えない世界のアイQ&A」「カメラが捉えた見えない世界 心霊写真の解説」が収録され、これもかなりのボリュームで、読みごたえがあります。
 「人間誕生」をこれほどまでに感動的かつ独特に活写したこの作品…宗教マンガの到達した金字塔の一つだと私は考えております。
 まあ、正直、褒め過ぎな気がしないこともないですが、「スピリチュアル」に関心のある方には一度読んでいただきたいと思います。
 こういうのはハートなんですよ、ハート!!

2024年6月27・28日 ページ作成・執筆

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