黒田みのる「家幽霊」(1990年11月25日第1刷発行)

 収録作品

・「うしろの女」
「綾は副都心に近い高級マンションで一人住まいをする女性。
 彼女のもとにN不動産の訪問販売員の女性が訪れ、リゾートマンションを勧める。
 部屋は八階の一番左側の部屋。
 この部屋は五年前、夫の康夫が購入し、二人で訪れた時、康夫が急死した場所であった。
 綾はこの部屋からの、康夫と一緒に見た海を久しぶりに見たいと考える。
 二週間後、風雨の強い日、綾は不動産会社の女性と部屋にやって来るのだが…」

・「頂門の一針を気取る女」
「谷井美佐は京都出身で、今注目の女性編集長。
 彼女はテレビ番組の審査員を務め、非常に辛辣な批評で、相手をこき下ろす。
 彼女の高慢な態度が電波に乗った翌日の夜、彼女は人気のない墓地で部下の男性と会うのだが…」

・「月下氷人の首」
「杉村修一・美子が結婚して三週間。
 修一宛に久田先生から小包が届く。
 久田はV大学の植物学の教授で、二人の仲人であった。
 小包の中身には、久田の首の彫像が入っており、指定された日に金づちで壊すよう頼む手紙が入っていた。
 美子の親友のユカはこれを訝り、いろいろと調べるのだが…」

・「生きている祠」
「都心に近いが、田園風景の広がる地域。
 三島夫婦は古いが作りの丈夫な家を借りる。
 ただ、毎夏、お盆近くの一日だけ指定の日に留守にするという条件があった。
 また、庭には祠があり、たまに奇妙な音を発するが、それには触らないよう言われる。
 そして、迎えた夏。
 夫の出張中、妻は不動産屋に明日、留守にするよう頼まれる。
 朝の八時までには家を出るよう釘を刺されていたのだが…」

・「見えない世界 心霊質問箱 解答・黒田みのる」
「死んですぐに生まれ変わってくる事ってありますか」

・「魚の目」
「春。北国の漁港。
 良は活魚料理店、芳野屋で働く板前で、まぐろの活け造りの名人であった。
 ある日、彼は、店の女主人と魚商人の松さんとの会話を耳にする。
 まぐろが全く獲れないようなのだが、松さんの様子がどうもおかしい。
 彼は、店を出た松さんの後を追い、彼女から話を聞く。
 昨夜、彼女は奇妙なものを見ていた。
 呉服屋の四越母子が舟に乗って沖へと出るが、その舟はまぐろの大群に押し上げられて進んでいたと言う。
 その晩、芳野屋に四越母子が客としてやって来るのだが…」

・「グルメの箱」
「典子は料理の苦手なお嫁さん。
 彼女は、社長夫人であるおばから「小さな箱」を十日間借りる。
 この箱を料理の材料と一緒に冷凍庫に入れておくと、一流の店の料理が出来上がっているという。
 この箱は軽くて小さく、中に何が入っているのかわからないが、確かのおばの言う通り。
 ただ、この箱を入れると、解凍しにくくなるので、肉などは自然解凍しなければならない。
 十日後、夫と一緒におばがマンションにやって来るのだが…」

・「家幽霊」
「都心から二時間の、開発されつつある丘陵地帯。
 そこに新築された白亜の家には、若い広告マン草川洋・広江夫婦と娘の杏奈が暮らしていた。
 引っ越しして三日目、広江は女性らしき影を目撃する。
 影は「ここはわたしの土地」で「だれにも渡さない」と呟いていた。
 その後も、女の幽霊は現れ、タンポポの花を置いていく。
 翌日、草川一家は奥さんの実家に身を寄せ、一週間後、黒田みのる先生に相談する。
 黒田先生は、家が建つ前のタンポポの丘に、白い家を思い浮かべながら、霊的な波動を送ると…」

 黒田みのる先生は心霊劇画の印象が強いでしょうが、1960年代からB級怪奇マンガを多数描かれております。
 そのどれもが、どのような発想で描かれたのかよくわからないものばかりで、今読んでも妖しい…いや、怪しいオーラを放ち続けております。
 この短編集でそのような味わいを持つのは「月下氷人の首」「魚の目」「グルメの箱」。
 ぶっちゃけ、心霊劇画よりも遥かに面白いです。

2022年12月9・12日 ページ作成・執筆

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