黒田みのる「幽界への旅」(1991年1月25日第1刷発行)

 収録作品

・「ホワイト・シャドー」
「深田良は空港で美しい娘に一目惚れをする。
 彼女は、黒田みのる著「霊魂の旅」を読みながら、涙を流していた。
 彼女の名は美加、父親の三回忌で、実家に帰る途中であった。
 これをきっかけに、二人は、美加の親戚の反対を押し切って、結婚する。
 だが、美加が病気で倒れ、彼は仕事の他にバイトを掛け持ちする。
 ある時、彼は十日仕事を休んで、危険なアルバイトにでかけるのだが…」

・「枕の影」
「川島ユリは20歳のOL。霊感はなし。
 初夏のある夜、彼女がふと目覚めると、部屋に女の霊らしきものを視る。
 翌朝、二階の窓で枕を乾かしていると、地震で枕が庭に落ちる。
 拾いに行き、枕を後ろ頭に当ててみると、またもや霊の姿が視える。
 その時、彼女の家を訪ねに来た青年にも枕を同じように当ててもらうと、彼も同様の体験をする。
 女の霊の正体とは…?」

・「鮫」
「日本最大のビジネス・ビル。
 この中には、日本のトップ企業のトップ支店が二千以上も入っていた。
 森村正はここで働くことになるが、初日、女性の飛び降り自殺を目の当たりにする。
 昼、恋人の恵と食事をしていると、横に岡本という男性が座る。
 岡本は元・社会科の高校教師で、今はビルの管理会社で働いていた。
 彼によると、このビルで変死したのは五人目だという。
 更に、同日、恵の同僚の桜井が女子トイレで血まみれになって変死する。
 その時、恵は窓の外に何かの動物の眼を目撃する。
 一か月後、正は岡村のアパートの部屋に呼ばれる。
 アパートからはビジネス・ビルがよく見えて、ビルに向けてカメラが設置してあった。
 岡村は正に写真を見せるが、夜、赤外線で撮ったという写真の一つにはビルの上階に黒雲がかかっていた。
 この黒雲は四十階以上を覆っており、変死した女性達は皆、そこで働いていたという。
 岡村の言う「ブラック・ゾーン」に潜むものとは…?」

・「前世の絆」
「中年の女性。
 彼女にはある懸念があった。
 夫と娘のマリ子(22歳)の仲が親子の域を超えているのである。
 彼女は祖母の話した「生まれ変わり」ではないかと考える…」

・「レッドリバー」
「村井康夫(21歳)は車で東京から故郷に帰る途中、居眠り運転のダンプに衝突され、亡くなる。
 目撃者によると、助手席に若い娘がいたということなのだが、彼女の行方はわからない。
 兄はその娘について調べるため、東京に向かう。
 そして、事故の目撃者、弟の隣人、弟の通っていたバー、弟のアルバイト先、そこで親しかった春日敬子という女性を次々と訪れる。
 しかし、弟と一緒にいた女性の手掛かりは写真一枚のみ。
 兄はこの写真を黒田みのる先生に鑑定してもらうと…」

・「幽界への旅」
「神紀杏奈は「見えない世界」の研究者。
 彼女は講演会の際、倉橋優子という若い女性を紹介される。
 倉橋優子は霊能者の森田の弟子であった。
 講演会の後、二人は喫茶店で会う。
 優子が話したのは、活魚料理の店で「魚の幽体」、そして、「幽体の海」を視た体験であった…」

 この単行本では怪作「鮫」がピカ一です。
 「あとがき」には、「ジョーズ」が大ヒットしていたので、編集者に「鮫をテーマにして恐怖を描け」と言われたとのこと。
 一応、鮫は出てくるけども、ここまで妙チクリンな話を仕立て上げるのは、黒田みのる先生しかいない!!と断言できます。
 あと、「魚の目」と同様に、魚の幽霊が出てくる「幽界への旅」も恐ろしく奇妙な味わいです。

2022年12月22・24日 ページ作成・執筆

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