黒田みのる「運命レンズ」(1990年8月25日第1刷発行)

 収録作品

・「四面楚歌の血」
「ある物産会社の社員旅行。
 飲み会の次の日の朝、第一営業部の大辻明彦は浜辺を散歩していると、黒衣の女性を目にする。
 彼は衝動的に彼女に結婚を申し込み、彼女を抱く。
 彼女の名は友子で、海岸で別れて二か月後、彼女は彼のマンションにやって来る。
 夫婦になるものの、明彦は会社の荒井女史とできていて、友子が邪魔になる。
 ある夜、明彦と荒井は共謀して、睡眠薬を飲ませた友子に重しを付けて海に沈める。
 その翌朝、明彦のマンションで二人が目覚めると、友子が料理をしていた。
 しかも、彼女の足には重りを付けた際の紐の痕が残っている。
 その夜、明彦と荒井は山中に友子を運び、車で轢き殺す。
 ところが、翌朝、友子が平然と現れて…。
 何度、殺しても死なない女の正体とは…?」

・「和菓子とケーキ」
「岡田美智子と宮本広子はあるマンションに同居していた。
 ある夏の日の同時刻、美智子は洋菓子屋でケーキを、広子は和菓子屋で和菓子を買い、マンションへと戻る。
 またも同じ時刻、二人は尾形に呼ばれたような気がして、菓子の包みを落としてしまう。
 途中、ある角で二人はばったり出会い、一緒に帰宅する。
 菓子の包みを開くと、二つのうち、一個が潰れていた。
 実は、美智子と広子はそれぞれ尾形という男性に声をかけ、片方には内緒でマンションでデートをする予定であった。
 気まずい雰囲気の中、電話がかかってくる。
 その電話は、尾形が交通事故で死んだという知らせであった…」

・「広い庭」
「明夫と洋子は若い夫婦。
 二人は狭いながらも、マイホームを手に入れる。
 だが、洋子は、隣家の女性の影響もあり、広い庭に憧れる。
 ある日、デパートで買い物をすると、「盆景」の展示販売会を開催していた。
 そこで、彼女は理想の庭の盆景を見つけ、買って帰る。
 こういう庭を夢見つつ、彼女は自宅の猫の額のような庭にその盆景を置くと…」

・「見えない世界 心霊質問箱 解答・黒田みのる」
「霊感って鍛えたら強くなるんですか?」

・「朝靄の森《前編》」
「東西出版書籍編集部の好村真理は新人でありながら優秀な編集者。
 編集長の推薦で、彼女は、注目の詩人、大月菊子の手伝いをすることなる。
 秘書の谷の案内で、大月菊子の家を訪れると、その家にはあちこちに「朝靄の森」を映した写真が飾ってある。
 その写真の風景は、真理が喫茶店で谷を待っている間、頭に浮かんだものと一緒であった。
 大月菊子はこの写真は自分が撮ったもので、真理にその念を送ったと話す。
 また、菊子は詩作の際、この森を散策するとのことであった。
 目をつぶるだけで、行けると言われ、真理がそうすると、目を開いた時には写真の森の中にいた。
 ふと見上げると、木の枝に首吊り死体が…」

・「朝靄の森《後編》」
「谷の導きによって、真理は写真の風景から脱出する。
 だが、菊子は彼女を「ファミリー」扱いして、大月家に監禁される。
 一週間後、彼女はまた写真の森に行かされる。
 そこには、菊子の弟子で、森で行方不明になった近藤涼子の死体があった。
 今回も谷によって、真理は森から逃れる。
 この森の秘密とは…?」

・「姉妹の間」
「平凡かつ平和な高倉家(両親に礼子・良子の姉妹)。
 ある晩、良子が武村という青年を婚約者として家に連れてくる。
 武村は数か月前、姉の礼子に一方的に別れを告げていた。
 ところが、武村は皆の前で、良子と結婚するつもりはないと断言。
 更に、自分のフィアンセと会うよう言って、辞去する。
 彼と入れ替わりに、若い女性が現れるのだが…」

・「見えない世界 心霊質問箱 解答・黒田みのる」
「色のついた夢は見せない世界からの知らせなの?」
「お墓参りができないんですけど…」

・「運命レンズ」
「カメラマンの立花清志は写真を撮った相手の将来を知ることができ、芸能界ではニューフェイスの鑑定士として名を知られていた。
 だが、それで恨みを買い、自分のマンションの前で暴漢に襲われ、左目を潰される。
 一か月半後、退院するも、カメラマンとしての道はあきらめざるを得なかった。
 彼の母は、彼の宝物のカメラは捨て、「もっとすごい宝物」をあげると言う。
 それから、一か月後、立花清志は鑑定士として復活していた。
 今度は、彼が一目、女優やアイドルの卵を見るだけで、相手の将来を当てることができる。
 立花清志の秘密とは…?」

 バリバリの心霊漫画でなく、「怪奇とも心霊ともつかぬ、怪奇心霊ハーフコミック」(「あとがき」より)が七編収められております。
 何とも形容のしがたい、不思議なセンスの作品群で、「四面楚歌の血」「朝靄の森」「運命レンズ」はかなり妙チクリン。
 ただし、発想は面白いのに、何回読んでも、釈然としないところがあって、そこが惜しまれます。

2022年12月16日 ページ作成・執筆

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