黒田みのる「シリーズ人間世界 生と死」(1974年2月10日発行)

・「第一話 俺の愛」
「雨の日、工員の牧潤一は、傘もささずに歩く西川恵子と出会う。
 彼は彼女をアパートの一室で休ませ、これをきっかけに二人は同棲するようになる。
 彼女は妊娠し、二人は幸せの絶頂にあったが、ある日、彼女は交通事故死する。
 悲しみに耐えかね、彼は彼女の遺品を全て処分。
 そして、二十年後、彼は社長として成功するが、いまだに独身であった。
 その彼の前に、恵子を名乗る娘が現れるのだが…」

・「第二話 憑かれた女」
「恋敵の春子に毒をもられ、惨たらしく死んだ文字若。
 彼女は、春子に対する恨みから幽界の奥に進めず、春子とその子孫を次々ととり殺していく。
 1973年、文字若の霊は沢和子にとり憑き、次々と不幸をもたらす。
 まず、男にレイプされそうになったことから、恋人と破局。
 町と家族を離れ、様々な男と出会うが、結局、うまく行かず、場末のスナックまで身を落とす。
 ある日、氷屋の青年が彼女の話を聞いて、彼女は「何かにとり憑かれている」と指摘する。
 彼が彼女に「手かざし」をすると…」

・「第三話 魔性幻影」
「道場で、村上洋子は平川から「手かざしの業」を受ける。
 それで、出た来たのは緒方左門という下級武士の霊で、彼はある城下町で、商人の娘、西川菊にだまされて、殺害されていた。
 道場での光景を見た谷口は、科学を専攻する者として、憑依霊の話すことが事実かどうか確かめるため、九州のK市に向かう。
 彼は、緒方左門を先祖に持つ、荒れ果てた武家屋敷を探し出すのだが…」

・「第四話 鬼女狂乱」
「中学生の丸山幸子(13歳)は突如、別人のように荒れ狂い、母親の千鶴子に暴力を振るうようになる。
 幸子は学校にも行かず、行動はますますエスカレート。
 一年後、水商売をやめ、店を手放そうとした千鶴子に、不動産屋の社員が「娘にわるい霊がとり憑いている」と話す。
 藁にもすがる思いで、千鶴子は「手かざしの業」を習い、幸子に施す。
 すると、幸子は苦しみ出し、彼女とは思えない声で話し出す。
 話しているのは、丸山家の先祖に、盗みの疑いをかけられた上、凌辱されて殺された娘の霊であった…」

・「第五話 奇跡の男」
「太平洋戦争中、岡田は病気のため、除隊し、飛行機工場の経営に全力を注ぐ。
 しかし、空襲で工場は焼け、敗戦後、彼に残ったのは莫大な借金ばかり。
 彼は自殺を決意し、岡田家の位牌を預けている、山奥の家に向かう。
 その家では家人は留守だったが、彼は引き寄せられるように物置小屋に入る。
 風呂敷包みの中に岡田家の位牌があり、彼は先祖の位牌に向かい、詫びる。
 泣き疲れた彼が奇妙な音に目を覚ますと、位牌がひとりでに立ち上がる。
 その上に先祖達の霊が浮かび上がり、天から射す、まばゆい光の中に消えて行く。
 彼が外に出ると、鮮烈な黄金の光が天空から地上に降り注いでいた。
 これをきっかけに、彼は「手かざしの業」を覚え、心霊世界の研究への一歩を踏み出す…」

・「第六話 死霊復活」
「初夏の雨の日。
 綾子は、恋人の井口時雄とバスに乗っていて、崖崩れにあう。
 バスは川に転落し、綾子は水死。
 霊体となった彼女は、幽界で指導霊に会う。
 だが、時雄が妹の知子と保険金目当てで付き合おうとしていることを知り、彼女は現世へ戻り、妹に憑依する…」

・「第七話 死者のくに」
「ある住宅地の午後。
 良子は、誰もいない家で、一人病死する。
 幽体となった彼女の前に、指導霊が現れ、幽体の型が整った後、彼女は幽界の奥へと向かう。
 しかし、光のある所に行きつく前に、彼女は、高校生だった頃に愛していたが、事故死した潤一のことを考えしまい、地の底に沈む。
 彼女は潤一の霊と再会するのだが…。
 そして、彼女は幽界の掟を目の当たりにする…」

・「第八話 幽界慕情」
「公園で見知らぬ犯され、殺された良子。
 幽体となった彼女は、現生に残された人々の有様を目にする。
 彼女の恋人の和男。
 彼女を殺したヤクザ男。
 彼女を目の敵にしていた常務。
 彼女は自分の過去を知り、「因果応報」の理を知る…」

・「第九話 屍蝋の流域」
「漁港の網元の家に産まれた西川夏子。
 彼女には幼い頃から霊能力があった。
 彼女が十六歳の頃、彼女は自分の顔が別人になることに気付く。
 その顔は、おじの春吉の幽霊にあった時、そばで飛んでいた顔であった。
 以来、彼女はしばしばその顔になるようになり、その間、自分が男で、別の所に住んでいると確信するようになる。
 その男は、ある村で養生していた武士らしい。
 彼女は、心霊の研究をしている医者の塚田と共に、その村があった町を訪れる。
 塚田は、彼女が前世の記憶を取り戻しているのではないかと考える。
 彼女は、荒れ果てた屋敷に入り、秘密の地下洞窟に降りるのだが、そこで目にしたものとは…?」

・「第十話 紅い恐怖」
「礼子は身重の人妻。
 彼女の夫は心霊知識があり、「手かざしの業」を身に付けていた。
 しかし、彼には気掛かりなことがあった。
 物質文明により、人々の魂は荒廃し、魂の進化が止まっている。
 それがひずみを生み、均衡が崩れる時、物質文明は滅び、「火の洗礼」が始まるのだ…」

・「第十一話 最後の霊魂」
「ある家に後妻に入った峰子。
 家人が留守の時、彼女は、元恋人の昭夫に迫られ、頭を打って死亡する。
 霊魂になった彼女は、指導霊に導かれ、幽界の奥に向かうが、そこでは「火の洗礼」が始まっていた。
 「火の洗礼」とは一体…?」

 「漫画No.1」に(多分)連載された、心霊劇画の金字塔の一つです。(注1)
 ただし、あまりに独特な教義による作品なので、今現在では、完全にキワモノ扱いだと思います。
 それでも、一種のファンタジーとして捉えれば、かなりの力作で、読み応えは充分です。
 黒田みのる先生のおよそ半世紀に及ぶ漫画家としてのキャリアを再評価してもらいたいものです。

 ちなみに、レモンコミックス(立風書房)にて「死霊復活 生と死」のタイトルで再刊されております。
 その際、第一話、第二話、第五話が削除され、写真を漫画に差し替えたり(第四話)、所々、文章が改変されております。

・注1
 総集編の雑誌も存在するようですが、そこまでは手が出ませんので、より詳しい方の解説を待ちたいと思います。

2022年1月1日 ページ作成・執筆

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