黒田みのる「水子霊 哀しき愛児たちの霊」(1992年2月15日初版発行)

・@「グレーラブ」
「倉田潤は、理佐に堕胎手術を受けさせる。
 理佐のお腹の中の子供は彼が父親でなかったためであった。
 このことをきっかけに、潤は一念発起し、再び小説に挑戦する。
 一年後、潤は作家として地位を固めつつあった。
 また、理佐は、彼の子供を妊娠して七ヶ月になる。
 ある日、二人が車に乗っていると、トラックが車に突っ込んでくる。
 理佐は病院に運ばれ、難しい手術を受ける。
 潤が手術室の外で待っていると、彼の前に、母親の幽霊が現れ…」

・A「水子霊TOMORROW」
「ある男性の娘、マキは、ダメ男と同棲するために、家出同様であった。
 ある日、マキと彼氏が男性の会社を訪ねて来て、事業のための200万円の借金を申し込む。
 しかも、マキは妊娠しており、事業のために堕胎すると話す。
 それを聞いて、男性が顔色を変えた時、マキのお腹にいる赤ん坊が視える。
 赤ん坊は助けを求めていた。
 帰宅後、男性が家族(妻、息子、息子の嫁の浩美)にその話をすると、今度は、浩美のお腹の赤ん坊が視える。
 その赤ん坊は、助けてと涙を流して、訴えていた。
 同時に、キュキュキュキュ…という奇妙な音が聞こえる。
 これは、五十年前、彼が少年だった時に聞いた音で、愛に飢えた水子霊達をサタンが引き連れてやって来る時に鳴るのであった。
 そして、彼の母親は水子霊達に憑り殺されていた。
 男性は、マキが堕胎しないよう、生活費を込めて、500万円を渡すのだが…」

・B「水子霊BIRD」
「由起は身重の身。
 親戚を訪ねた帰り、バスに乗った時から、由起の周辺に烏が出没するようになる。
 特に、群れのボスの大烏が彼女を探るように見つめていた。
 由起によると、烏からは「ピロピロ光線」が出ており、それが他の烏に当たると、母親に寂しさを訴える子供の声が聞こえるという。
 更に、声だけでなく、烏が、血まみれの赤ん坊に視えるようになる。
 どうやら、大烏と血まみれ赤ちゃん達は、由起の赤ん坊を狙っているらしい。
 定期検診の時、夫婦は医者にこのことを相談する。
 医者の父親は神社の神主で、医者は大烏は「生命を魔界に誘うボス烏」だと話すのだが…」

・「たとえ一日でも…」(文章)
「秋田に住む八代敬子さん(高二)からの手紙。
 彼女は春休みに入ってから、毎晩のように赤ちゃんの夢を見る。
 夢の中で、彼女と両親がハイキングをして、大きな川の所まで来ると、川土手に赤ちゃんが寝かされている。
 赤ちゃんは覗き込んだ彼女に笑いかけるが、両親を見て、急に泣き出すのであった。
 新学期が始まると、夢をぱったりと見なくなる。
 だが、学校の帰り道、友人と別れて一人になると、赤ちゃんの泣き声が聞こえ、その方向に向かうと、いつの間にか河原に立っていた。
 同じことが何度も繰り返され、彼女は、黒田みのる先生に相談の手紙を出すと…」

・C「水子霊NOW」
「潤と麻美は駅で顔を合わせる程度の関係でしかなかったが、二人が落ち込んでいる時に肉体関係を持つ。
 麻美は妊娠するが、彼女の判断で中絶する。
 病院から帰って、彼女は部屋に一人…。
 すると、お腹が猛烈に痛くなり、子宮のあたりから声が聞こえる。
 その時、潤が金の無心に来るのだが…」

・D「水子霊MOTHER」
「海を見下ろす高台に建つ白い家。
 そこに、夫婦とユカと麻美の姉妹が住んでいた。
 ある休日、父親が庭で休んでいると、彼を呼ぶ声が聞こえる。
 その声の方に行くと、洋子と名乗る少女が現れる。
 洋子はユカにそっくりで、若干、年上に見えた。
 だが、少女の姿は彼にしか見えず、少女はすぐにいなくなる。
 夕食の時、ユカはその少女のことを父親から聞く。
 すると、何故か涙があふれて来て、その少女に会いたくてたまらない。
 部屋に戻ると、鏡の中に洋子が現れ、ユカに笑いかける。
 次に、洋子は赤ん坊になり、急に血まみれになる。
 ユカの話を聞き、父親は彼女を友人の精神科医に診せる。
 ユカには異常は認められなかったが、ただ一つ気になることがあった。
 ユカは、赤ん坊が現れた後、乙女堤の映像が見えると話す。
 乙女堤は、父親と精神科医が高校生の頃、よく歩いた場所であった。
 それだけでなく、その頃、父親が付き合っていた、四歳年上の啓子のことも知っていた。
 洋子は、父親の過去と関わりがあるのだろうか…?」

・E「水子霊FATHER」
「梅宮美和は根津武と付き合っていたが、母親の頑強な反対により、結婚は無理であった。
 友人の梢の勧めもあり、武との縁を切るため、美和は中絶手術を受ける。
 しかし、手術から三日後、会社に復帰するも、彼女の身体には炎のようなものが出ていた。
 また、彼女に想いを寄せる男性とデートすると、彼女の肩に血まみれの赤ん坊がいて、彼を睨みつける。
 こういうことが重なり、美和が堕胎した赤ん坊を可哀想と思い始めた時、何故か武とよりが戻りそうになる。
 美和は梢のもとに相談に訪れるのだが…。
 赤ん坊の霊の目的とは…?」

・F「姉妹の間」
「礼子と良子の姉妹。
 ある日、良子が恋人者を家に連れてくると言うが、その相手は、姉の礼子を捨てた武村であった。
 だが、武村は、結婚を申し込むのかと思いきや、良子と結婚するつもりはないと断言。
 その代わり、彼のフィアンセと会って欲しいと言い残して、立ち去る。
 入れ替わりに入って来た女性は、礼子と良子が羨ましくて、彼を奪ったと告白し、彼のことは愛していないと話す。
 この女性は一体誰…?」

 黒田みのる先生が水子霊に対する深い同情と危惧を胸に抱いて、描いた(ような気のする)作品です。
 先生によると、「水子の霊は、母が恋しく、また、兄弟たちと遊びたくて、この世とあの世(幽界)にさまよっている。そして、寂しい水子霊達は互いに寄り集まり、集団化しつつあり、それを外国から入って来た悪魔(サタン)が操っている」のだそ〜な。(他にも、「水子霊」について役立つ(?)知識がいっぱい!!)
 当たり外れは別として、生臭い内容をここまでドラマティックに描き切った手腕には感嘆せざるを得ません。
 ちなみに、お馴染みの「見えない世界のレイQ&A」「心霊写真解説」も巻末についておりますが、「水子霊」尽くしです。
(上巻に@〜B、「たとえ一日でも…」収録。下巻にC〜F)

2022年3月9・10日 ページ作成・執筆

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