黒田みのる「ザ・KAMI」(1975年9月13日発行)
・「第一章 あえいだ番小屋(雷雨と死)」
「ある農村。
小学六年生の早川潤一と森村良は山で昆虫採集をしていた時、急な雷雨に襲われる。
山小屋へ避難すると、そこには男女の先客がいた。
二人が隠れて様子を見ると、男は女に暴力を振るう。
女は他の男と浮気をしており、男が女をレイプしても、女は浮気相手のことを忘れない。
男は逆上して、女を絞め殺し、目撃者である潤一と良へも鋤を手に襲いかかる。
だが、鋤に謎の光が宿り、男は鋤を投げ出して、外へ逃げ出す。
また、少年たちも光の奔流により、小屋から押し出される。
その直後、大木に雷が直撃し、木の下の男は焼け死に、倒れた木が小屋を圧し潰す。
少年たちを救った光とは…?」
・「第二章 傷ついた輪っぱ(光と罰)」
「六年後、高校三年生になった潤一と良はバイク便のバイトをしていた。
彼らの仕事は羽田からある会社に書類を届けることであったが、ある日、桑原課長から総務課長でなく自分に直接手渡すよう指示される。
良は何か引っかかるものを感じながらも、潤一は多少なりとも金になればいいと気にしない。
その数日後、二人は彼らが憧れているタイピストの紺野の姿を最近見ないことに気付く。
彼女のことを尋ねると、彼女には経理主任という婚約者がいると聞いて、がっかりする。
三日後の雨の日の仕事帰り、良は横断歩道で紺野の姿を見て、会社に戻る。
紺野は若い男と一緒であったが、その後を追うと、桑原課長が女とセックスしていた。
二人の話を立ち聞きすると、紺野と経理主任は桑原課長から濡れ衣を着せられて逃げ回っているらしい。
二日後、紺野と経理主任は福島で自殺していたことが明らかとなる。
二人は桑原課長から経理主任が五千万円も横領していたと聞かされるが…」
・「第三章 燃え尽きた銭(炎と生霊)」
「それから六年後。
潤一は大制建設の建設技師となり、良は牧師になっていた。
良は新聞社の学芸部に勤める谷郁子に想いを寄せ、ある夜、結婚を申し込む。
それから二か月後、良はアメリカ研修から帰ってくる。
彼はみっちり心霊研究を勉強してきて、潤一にそのことを語る。
一方の潤一にも良に話があり、それは郁子に関することであった。
その時、桑原邸が火事だと潤一に電話が入る。
その家は彼が設計した家であった。
良と潤一は火災現場に向かうが…」
・「第四章 抱きしめた死(肉体と心)」
「交通事故にあった良と潤一は一命を取り留める。
だが、二人の魂は身体を入れ替わっていた。
良は潤一となり、郁子と結婚する。
彼女は潤一の子を妊娠しており、子は順調に育つ。
だが、良は自分と潤一は「沈黙の罰」を受けていると考え、悩む。
ある日、彼は潤一の秘密を知るのだが…。
良と潤一、二人を待ち受ける運命は…?」
・「第五章 神が残した愛(誕生と誕生)」
「郁子は女児を産む。
そして、これは「明日の物語」…」
芸文社より依頼のあった「怪奇心霊劇画選集(全十巻/本当に十巻描かれたかどうかは不明)」のうちの第一巻目です。
二人の男性の人生を軸に、ところどころに心霊知識の解説が挿入されておりますが、ドラマ重視で心霊知識が一々ストーリーに乱入してこないので、まあまあ読みやすいです。
内容としては、タイトル通りに「神」を扱っており、ストーリーが「因果応報」に貫かれているのも、読みやすさのポイント。
でも、ラストはスッキリしないなあ…。(「三菱重工爆破事件」が出てきて、時代を感じます。)
あと、黒田みのる作品でお馴染みの「手かざし」が一切出てこないのが、逆に新鮮でした。
とあれこれ書きましたが、最終的に印象に残るのはジャケット・イラストだけだったりします…。
後に「ザ・霊歌」とタイトルを変え、出版研より再刊されております。(若干、加筆訂正されております。)
・備考
カバー痛み(幾つかの折れ。前袖が外れ、背表紙上部に欠損)。
2024年1月22・23・25日 ページ作成・執筆