黒田みのる「霊能者の罠」(1990年9月25日第1刷発行)

 収録作品

・「耳の牢獄」
「新進ピアニストの河村美和。
 彼女は、海に面した丘にある、父親の別荘で休養をとっていた。
 最近、ピアノを弾いていると、何故か波の音が聞こえ、指が重くなり、演奏が乱れてしまうのである。
 別荘には、美和とお手伝いのナミの二人きり。
 ナミは、海岸で海を見つめて泣いていたところを美和が拾って雇ったのであった。
 ある夜、彼女の寝床に男の幽霊が現れる。
 美和の耳に波の音を運んでくるのは、この男の仕業であった。
 男は美和の耳を海水で洗わないと腐ると警告する。
 翌日、美和は漁船を借りて、沖まで出る。
 そして、水着姿の彼女は海中にダイブするのだが…」

・「見えない世界 心霊質問箱 解答・黒田みのる」
「いじめられていると、生まれかわってもいじめられるのですか?」

・「阿鼻叫喚の顔」
「二月、羽田を飛び立ったジャンボ機は奇怪な空間に吸い込まれ、墜落する。
 乗客の一人、理沙が目を覚ますと、そこは草原であった。
 生き残ったのは、不倫相手の洋介と二人の女性だけ。
 しかし、ここは「死者のくに」ではないものの、理沙は、二人の水子をつくったため、罰せられなければならないという。
 四人以外のジャンボ機の乗客は皆、亡霊ではあるが死に切ってはおらず、「罪深い女の愛」があれば救われるらしい。
 この場所は一体どこなのであろうか…?」

・「救われの宿」
「若妻の理加は重い病気であった。
 夫の叔父の勧められ、夫婦はある神社に参拝した後、旅館に一泊する。
 そうすれば、どんな病気でも一発で治ると言われていた。
 しかし、理加はこの旅館が気持ち悪くて仕方がない。
 夫婦が泊る部屋の一隅には、何故か土が敷かれてあった。
 旅館の主人によると、この土は「ありがたい土で、すべてはすぐに育つ」そうなのだが…」

・「緑の血族《前編》」
「西川進一と有賀美沙は、美沙の家族に結婚の承諾をもらうため、険しい山道を登り続けていた。
 グロッギーな彼のため、美沙は川を越えて近道をしようとするが、進一は途中の飛び石で足を滑らせ、川に転落。
 美沙は彼を救うために、川に飛び込む。
 進一はどうにか岩にしがみつくが、その時、彼は美沙の手に水掻きを目にする。
 気が付くと、彼は美沙の実家に寝かされていた。
 美沙の実家は半分水中に没し、池のあちこちに蛙の形をした岩があり…」

・「緑の血族《後編》」
「美沙の家族(母と姉)には水掻きがあり、普通の人間だった美沙もその仲間入りをする。
 そこへ、蛙面の男が家にやって来る。
 彼は、進一を同じ体質に作り替え、ここで働かせようとする。
 この屋敷の秘密とは…?」

・「見えない世界 心霊質問箱 解答・黒田みのる」
「夢はすぐに忘れちゃうけど、なぜ?!」

・「紹介される男」
「高林美起(19歳)は専門学校に通う、普通の娘さん。
 彼女には三人の女友達がいたが、三人とも高慢ちきなセレブで、内心では美起を見下していた。
 三人は、自分達が付き合っていた男を美起に払い下げて、その様子を観察しようとするのだが…」

・「霊能者の罠」
「今売り出しの女流霊能者、中条美加。
 彼女は師匠の霊にテレパシーで呼ばれ、山腹にある別荘を訪れる。
 ここは二年前、彼女の師匠が自殺をした場所であった。
 師匠の霊が弟子を呼び出した理由とは…?」

 桃園書房から出されている短編集の中では、最も親しみやすく、入門編としてはベストではないでしょうか?
 様々な種類の作品が収録されているだけでなく、「見えない世界」云々の解説がさほどなく、ストーリーに集中することができます。
 「地獄めぐり」(?)がテーマの「阿鼻叫喚の顔」、呆気にとられること必至の「救われの宿」、蛙人間が出てくるゲテモノ系「緑の血族」、セレブな女達の企みの帰結を描いた「紹介される男」、「新進霊能者 vs 霊能者の霊」を描いた「霊能者の罠」は、心霊ファンでなくても、楽しむことができると思います。
 でも、やっぱり、どれもこれも妙チクリンですが…。

2022年12月29・30日 ページ作成・執筆

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