黒田みのる「霊を売る女」(1990年7月20日第1刷発行)
収録作品
・「草花の死界」
「花之坊千草(19歳)は花の声を聞くことができた。
少し枯れると捨てられる運命の花々に彼女は心を痛めるが、彼女にできることはわずかしかない。
ヘアーメイクの女王のユミ・マキシマの事務所、西森という家の住み込みお手伝い、そして、空港近くの花屋と彼女は職業を転々とする。
ある日、空港に花を届けに行くと…」
・「餓えた湯気」
「美貴の家にある鍋。
ある日、鍋いっぱいに煮物を作るも、気が付くと、どんどん減っていき、しまいには鍋の底にちょっこり。
同じことは、おばがこの鍋でおからを持ってきた時、起こっていた。
美貴はこの鍋を持って、おばを訪ねる。
この鍋は、いとこの久美が去年、学校のバザーで買ったものであった。
鍋の前の持ち主について調べると…」
・「門葬」
「夏のある日、由美が帰宅すると、門に見知らぬ顔の男性が立っている。
それは父親であったが、単なる見間違いとは思えない。
その夜、天気は荒れ模様で、町は強い北風に襲われる。
由美の祖母は門のことをしきりに気にする。
祖母の心配通り、北風に門が倒され、「あいつら」が家に上がってくる。
仏壇のある部屋で、祖母は位牌を手に「あいつら」に立ち向かうのだが…。
「あいつら」の正体とは…?」
・「離魂届」
「藤平広子は27歳のOL。
彼女はアルコール依存症で、そのために、夫の和也と半年間、別居中であった。
ある夜、いつもと同じように酔って、マンションに帰ると、水道水が何故か酒になっている。
和也のことを考えながら、酔いつぶれようとした時、寝室に何者かの気配がある。
寝室に行くと、暗闇の中で和也が彼女に背を向けて座っていた。
和也は彼女に離婚届を渡し、判を押して送るよう言う。
帰ろうとする和也を広子は引き止め、彼に風呂に入って行くよう勧める。
だが、風呂には…」
・「予知の家」
「新興住宅地の中で、丘に一軒だけぽつんと建つ家。
その家に若い夫婦と幼い娘の一家が引っ越してくる。
引っ越しの日、一家は祖父母とお祝いのパーティをする。
その最中、天中の蛍光灯から白い煙が出ると、テーブルの料理を覆う。
すると、料理の皿が揺れて、次々とひっくり返っていく。
しかし、白い煙が蛍光灯に戻ると、食卓は元通りになっていた。
訝りながらも、食事を進めるが、ふとしたきっかけから料理がめちゃくちゃになり、それは先ほど、目にした光景と一緒であった。
おかしいことはそれだけにとどまらず…」
・「引退する愛」
「ある若夫婦(康夫・由美)。
その家に、康夫の姪である晴美が居候していた。
晴美は実に無遠慮な娘で、近所のおばさんによると、商店街で康夫と一緒に歩いていたらしい。
二人の間には何もないとは思いつつ、晴美に居候されるのもそろそろウンザリ。
ある日、由美が洗濯をしていると、洗濯機の中から声がする。
それは晴美の洗濯物からであった。
晴美の洗濯物は、康夫が大好きで、由美がいても関係ないと話す。
その時、洗濯機が由美に話しかけてくる。
由美が晴美に勝つためには…」
・「霊を売る女」
「康子という女性が霊能者の高林美峰を訪れる。
康子の悩みは結婚しても、子供ができないこと。
実は彼女は以前、付き合っていた男のせいで流産しており、子供ができないのは、水子の霊のためであった。
美峰は霊を使って、水子霊を祓うと言うのだが…」
桃園書房から出された黒田みのる先生の単行本の第一弾です。
ジャンルは「心霊コミックとも少々味の違った、それでいて純粋怪奇でもない、心霊コミックと怪奇コミックのハーフのようなもの」である「怪奇心霊ハーフコミック」とのこと。
心霊ものでも怪奇ものでも一筋縄でいかない作品を生み出していたのに、それのハーフとなると、もう形容のしようがありません。
タイトルからして「餓えた湯気」「離魂届」「引退する愛」とかっ飛ばしておりますが、内容のキテレツさはタイトル以上です。
この単行本でのベストは「引退する愛」。
タイトルからは予想がつかないと思いますが、「洗濯機の中での洗濯物の戦い」を描いております。(マジで)
2022年12月24日 ページ作成・執筆