宮本ひかる「血狂い少女」(1974年9月25日発行)
「駒込吉祥寺のアパートで待望の一人暮らしを始めたばかりの、新人漫画家の流悦子(注1)。
彼女は、つばめ書房の編集、渡部に次回の作品として「八百屋お七」のマンガを描くよう依頼される。
取材のため、彼女がお七の墓を訪ねると、墓から血が流れ出すのを見る。
このことがあってから、お七の幻が彼女につきまとうことになる。
そして、彼女が「八百屋お七」の漫画を描いていると、漫画の中のお七が「く、苦しい。あたしをここから出して…」と訴えてくるのだった。
気分転換のため、散歩していると、通りすがりの僧侶に「死臭が漂っておる」と告げられる。
彼女は僧侶の言うまま、寺にあるお堂に封印の札を貼って、祈祷を受ける。
が、悪戯坊主が封印の札を剥がしたことから、除霊は失敗、彼女はお堂から走り去るのであった。
アパートにいつの間にか戻った彼女は、どうにかこうにか漫画を描こうとするものの、漫画の中のお七に邪魔されて、全く進まない。
漫画の中のお七は彼女に、自分に息吹を与え、この暗闇から出すように要求する。
そして、その方法とは、人の生血でお七の絵を描くことであった…」
故・池川伸治先生の率いた太陽プロの主要メンバーの一人でありながら、漫画の方の評価はイマイチな感じの宮本ひかる先生。
ひばり書房の黒枠に残した作品もあまり人気はないようです。(メチャクチャ好きな人がいましたら、すみません…。)
ただ、この「血狂い少女」はジャケットが素晴らしいです。鬼気迫るデザインに、シュールな色使い、なかなかアートなジャケではないでしょうか。
また、ストーリーもいい感じだと思います。
漫画の中で、漫画家が漫画を描いて、その漫画の中から出してくれるよう幽霊が訴えかけてくる…文章で書くと、非常に意味が掴みにくいのですが、これってメタフィクションです。
当時としては、かなり斬新なアイデアであるように思います。(他に似た作品があるのかどうか、未確認であります。)
ただし、一つ大きな問題がありまして、ぶっちゃけますと、それは「絵」なのです。
何と申しましょうか、煎じ詰めて言いますと、「面白味」のない絵と私は思います。
pp118〜127にかけて、お七に憑りつかれたヒロインが虐殺を繰り返すのですが、いくらでも面白く描けそうなのに、迫力に欠けるのです。
ラストの四肢解体も「あと一声!!」と叫びたくなるくらい、イマイチです…。
怪奇マンガなのに、そういうシーンに対して中途半端な描き方をしている印象がどうしても拭えません。
私としては、たとえ下手でも「てめえら〜、怖がらせてやるゼ〜!!」と筆から情熱が後先考えずにほとばしりまくったマンガの方が好きです。
・注1
ひばり書房の黒枠コミックスにて、三冊の作品を残しておられる漫画家さんです。
宮本ひかる先生と結婚されたそうですが、その後のことはわかりません。
2016年4月18日 ページ作成・執筆