杉戸光史「怪談血吸い天女」(1974年3月30日発行)

「川辺範子は家族旅行で、松原へ出かける。
 彼女が、兄の和雄と観光していると、双子松の前で幽霊らしき女性を見る。
 その後、二人は双子松の上で変死体を発見、更に、その腐乱死体には血が一滴もなかった。
 警察での事情聴取を終え、宿に戻った範子が風呂に入ると、双子松の前で見た女性に襲われる。
 女性は松の樹肌のような手を伸ばし、範子を押さえこみ、牙を剥いたところへ、宿の従業員がやって来て、事なきを得る。
 範子が風呂から上がると、兄は、その女性と知り合って、ほくほくしている最中であった。
 天女の間に宿泊する女性は、先程の化け物に間違いないと範子は確信する。
 その夜、どこかに出かけようとする和雄を、偶然目を覚ました範子は後をつける。
 すると、天女の間から悲鳴が聞こえ、鍵が開いていたので、範子は部屋に入る。
 そこは使われている形跡のない部屋で、襖を開けたところには、天女の絵が飾られてあった。
 範子が訝っていると、絵の中の天女が範子に襲いかかってくる。
 この天女の正体とは…?」

 タイトルだけ見たら凄そうですが、実のところ、整合性に欠けた、よくわからない作品です。
 天女が何者なのか? 一体何がしたかったのか? 何故に人を襲うのか?等々、明確な説明が最後までありません。
 それに加え、江戸時代にタイムワープするという要素もあり、混乱に拍車をかけます。
 杉戸光史先生としては、さんざん頭を悩ませて、読者を楽しませようとしたのでありましょうが、これはどうやら空回りに終わったようです。
 ただ、浴場でヒロインが「全裸」で血吸い天女に襲われる描写は、その心意気を買いたいと思います。

 ヒバリ・ヒット・コミックスにて再刊されております。

・備考
 貸本使用。糸綴じあり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕と名前の押印あり。カバー小痛み。背表紙にネズミの齧り痕あり。

2017年3月26日 ページ作成・執筆
2017年4月25日 加筆訂正

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