藤岡辰也「呪いの目」(1975年9月10日発行)
「美加と母親は、母子家庭ながら、財産に恵まれ、幸せな日々を送っていた。
しかし、美加が二階のベランダから転落するという事故によって、幸せな日々は終わりを告げる。
生命は無事だったが、美加は失明し、施設に預けられることとなる。
また、元来病弱だった、美加の母親は、ショックのため、急激に健康を害し、床に伏せるようになる。
だが、これは母親の妹とその連れ子の光一が、財産を狙って、仕組んだものであった。
病みついた母親の世話のために、屋敷に住みついた妹は、薬と偽り、毒を飲まし、徐々に弱らせていく。
最後に、特製の毒を飲ますと、激しい苦しみとともに、母親の顔は醜く崩れ、髪は抜け落ちる。
妹の企みを知った母親は、最後の力を振り絞り、妹と光一をナイフで襲うのだが、もみ合ううちに、自分の胸を刺してしまう。
母親は駆け付けた医師に、自分の両目を美加に移植するよう遺言を残し、こと切れるのであった。
母親の死は病を苦にしての自殺として処理され、遺言通り、母親の目は、施設の美加に無事に移植される。
だが、美加の胸には母親の最期の「(目を移植すれば)すべてがわかる」という言葉がずっと引っかかり、真相を確かめるために、美加は自分の家に帰る。
母の妹は、表面は歓迎するように振る舞うものの、内心では美加もいつか始末するつもりでいた。
しかし、彼女は、美加の顔に、毒殺した母親の顔を見る。
そして、美加に憑依した、母親の怨霊が、復讐のため、そして、美加を守るために、妹と光一に襲いかかる…」
ひばり書房黒枠に二冊だけ残した、(個人的には)謎の漫画家、藤岡辰也先生の第一作目です。
画力は高く、非常に丁寧に描かれておりまして、二冊で消えたのが、惜しい才能であります。
この作品は、二作目の「見えない恐怖」に較べると、地味な出来であります。
ストーリーも「東海道四谷怪談」がベースとなっているせいか、どんよりとした空気が漂っております。
(また、申し訳程度にオカルト知識の解説があるのが、オカルト・ブーム真っ盛りだった当時の空気を偲ばせるかも…。)
ですが、雰囲気は充分、全体的な完成度はなかなかのものではないでしょうか? 今現在でも読み応えはあると、個人的には思います。
最後に、入手困難なマンガでありますので、ハイライトだけですが、味わってくださいませ。
それにしても、子供の身体に大人の顔っていうのは、山岸涼子先生の「汐の声」にイヤな思い出があり、個人的に苦手だなあ〜。
・備考
貸本らしいが、使用感なし。ホッチキスのようなもので綴じ。カバーに切れやよれ。本文下部に折れあり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2016年3月15日 ページ作成・執筆