池川伸一「悲しき死面人形」(1975年8月25日発行)
「埼玉県北葛飾郡一本木村。
この村の中心にある寺に、石田家の人々が住んでいた。
石田家は、父母に長男友一、長女のぶ子、次男ヒロの五人家族。
しかし、父親はアル中のDV野郎で、日がな一日飲んだくれ、一家はひどく貧しかった。
のぶ子が小学六年生の三月、次男のヒロが風邪をひく。
医者にかかる金もなく、父親の暴力も加わり、風邪は肺炎に悪化、ぽっくり逝ってしまう。
ヒロの死に衝撃を受けた、のぶ子は以降、たびたび夢遊状態に陥るようになる。
その間、のぶ子はひそかにヒロにそっくりな腹話術人形を作り上げ、人形を通して父親への呪詛をぶちまける。
家族の制止も役には立たず、のぶ子はより精巧な腹話術人形を作ることに熱中。
そして、父親に自身の罪を突き付け、追い詰めていく…」
ひばり書房黒枠期の池川伸一先生の作品の中で、最も評価が高いものと思われます。
貧乏描写がやけに「昭和」で、どことなく「私小説」風な趣があるためでありましょう。
また、全体的に破綻がなく、深読みできるストーリーもポイント高いです。
個人的に、気になったのは、父親が死んだ時の母親のセリフ。
「父さんにとっちゃ母さんしか見方はいなかった云々」
「だめんず」とやらに引っかかる女の、典型的なセリフではありませんかね。
おたくはいいかもしれないけど、人生をメチャクチャにされた子供達はどうなのよ?…世間じゃよくある話なのでしょうが、心が荒みます。
・備考
貸本。カバー貼り付け。鉄の綴じあり。後ろの遊び紙、貸出票の剥がし痕あり。
2016年6月1日 ページ作成・執筆