矢乃藤かちすけ「悪霊はそばにいる」(1975年4月30日発行)



「深夜、ある一家のインターホンが鳴らされる。
 主人が応対に出ると、胸から血を流した男が助けを求めていた。
 救急車が呼ばれるが、男は出血多量で死亡。
 男を刺した男は毒殺されており、何故このような殺し合いが行われたのか、誰にもわからなかった。
 この事件があった翌日から、一家の周辺で奇怪な出来事が頻発するようになる。
 姉の江美は就寝中に恐ろしい顔をした人物に襲われ、居間ではポルターガイスト現象が起こる。
 その夜、一家は、妹のユリ子を除いて、皆、同じ夢を見る。
 その夢とは、仮面をつけた、古代の巫女が、若い女性の顔の皮を剥ぐというものだった。
 家の主人は霊媒の老婆を呼んで、祈祷するが、老婆は心臓麻痺を起こし、死亡。
 そこで、その老婆に渡された名刺に書かれている「怪奇現象アカデミー」に連絡を取る。
 怪奇現象アカデミーの人間が来るのを一家が待つ間、ユリ子が姿をくらます。
 江美はユリ子を捜しに行くと、ある部屋で、ユリ子が、江美が前夜に見た、恐ろしい顔で襲い掛かってきた。
 この家に渦巻く悪霊の正体とは…?」

 味わい深いマンガです。
「ラップ現象」「エクトプラズム」「自動書記」等々のオカルト用語がばんばん飛び出しますが、それが全くストーリーに説得力を持たせないのが凄い!!
 オカルト漫画の体裁をとってはいるものの、何かが違うんです…。(注1)
 説明が非常に難しいのですが、「ひばり書房のゲテゲテ・マンガ」と「オカルト漫画」は相性が悪いような気がします。
「オカルト漫画」って、基本的に学問的な内容(心霊学)になるものが多いようです。それに、「死後の世界」を扱いますので、やはり子供向けのテーマとは言い難いでしょう。
 そんなオカルト漫画と、子供の神経を逆撫でするためだけに陳腐な猟奇をブチ込んだ怪奇マンガって、まさしく「水と油」だったのではないか、と考えるのであります。
 と、ゴチャゴチャ書きましたが、そこは矢乃藤かちすけ先生の個性の出番!!
 問答無用で水と油を溶け合わせ、マヨネーズのような感じの作品になっている、と言えなくもないのかも…?。
 とにもかくにも、マヨネーズと同じく、採り過ぎは健康に良くありませんが……や、やめられそうにないです、この手のマンガ!!(禁断症状起こしてます。)

 ちなみに、このマンガ、顔の皮を剥ぐシーンが非常にトラウマ度高いです。
 皮を剥がされた時の「うおおおんっ」…本当に夢に出てきそうです。


・注1
 一概に、「オカルト漫画」と申しましても、扱っている内容が内容ですので、それこそ千差万別。
 代表的な先生方で、つのだじろう先生、黒田みのる先生、山本ゆかり先生、永久保貴一先生…とおられますが、皆が皆、それぞれに個性的であります。
 最近は、優れた霊能力者の方々が協力してくれるおかげで、知識の精度は上がってきている(ような気がする)のですが、個人的には、一昔前のどこか雑然とした、虚実入り混じっているような雰囲気のオカルト漫画が好きです。
 あれっ?…それって、このマンガのこと?!

・備考
 状態、非常に悪し。とにかく、めちゃくちゃボロい。貸本。ビニールカバー貼り付け、また、それによる歪みひどし。pp6・7、割れ。p106、鉛筆による落書きあり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。

2016年2月5日 ページ作成・執筆

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