五島慎太郎「フランケンシュタイン」(1974年3月30日発行)

「少女が奇妙な夢から覚めると、そこは見知らぬ部屋のベッドであった。
 城らしき建物にいるのだが、どこなのかさっぱり見当がつかない。
 城のさまよっているうちに、ある部屋で中年の男性の死体を見つける。
 男性の顔はかすかに記憶に残っており、少女の知っている人らしい。
 背後に気配を感じ、少女が振り向くと、そこに身長8フィート(約2,4メーター)、両手におもりの鉄球をぶら下げた怪物が立っていた。
 怪物に驚き、逃げようとすると、少女の前に、金髪の女性が現れる。
 ここエルシノア城の当主、グレートヘンと名のる女性は、少女の名はエリザベートだと教える。
 そして、エリザベートはフランケンシュタインの怪物の花嫁だと告げる。
 実は、エリザベートは、怪物がフランケンシュタイン博士に命じて、交通事故で下半身が潰れた女性の首と看護婦の胴体をつなぎ合わせてつくられた合成人間なのであった。
 それを証明するように、エリザベートの首には傷口を隠すための包帯が巻かれていた。
 エリザベートは城から逃げようとするものの、城は断崖絶壁に立っており、入り口にある跳ね橋は一日に一度しか開かない。
 更に、跳ね橋が降りても、エリザベートが逃げないよう、フランケンシュタイン博士は入り口に鉄格子を設けていた。
 城に閉じ込められたエリザベートは、怪物から逃げ惑ううちに、徐々に真相に近付いていくのだが…」

 ベースになっているのは、恐らく、名画「フランケンシュタインの花嫁」(注1)でしょう。
 ただ、単なる二番せんじでなく、結末には、あっ!!と驚くどんでん返しが仕掛けられております。
 子供向けの怪奇マンガと思いきや、「神の叡智(生命の本質)」にまで話が広がり、「フランケンシュタイン」のテーマを五島慎太郎先生は自分なりに表現しようとした様子です。
 それが成功しているかは横に置いといて、その心意気が素晴らしい!!

 とは言うものの、肝心のフランケンシュタインの怪物が魅力に乏しい気がします。
 タイトル・ジャケットからして、二日酔いで重い頭を抱えているオヤジみたいです。(朝、鏡を覗いたら、こんな顔をよく目にしませんか?)
 一般的には、フランケンシュタインの怪物は「フンガーフンガ―」言って、遅鈍なモンスターのイメージがあるでしょうが、メアリー・シェリーの原作では予想以上にインテリですし、映画の第一作はともかく、第二作の「フランケンシュタインの花嫁」ではちゃんとコミュニケーションする能力がありました。
 ところが、このマンガでは、鉄球を振り回して、ヒロインを追いかけまわすだけですので、モンスターの悲哀といった深みに欠けております。
 まあ、怪物が暴れるだけしか能がない理由は、伏線と密接に絡んでおり、文句を言っても詮無いのでありますが、個人的には、単純なモンスターに堕している感があって、残念…。

 ちなみに、個人的に印象深かったのは、このグレートヘン嬢であります。
 見たまんま、高飛車なお嬢様でありますし、やっぱり「おほほほほほ」と高笑いします。
 ギョウザのような目をしたヒロインよりも遥かに魅力的でして、個人的には、伊藤潤二先生と呪みちる先生の絵を足したものを二で割って、「優美さ」というものを引っこ抜いたら、こんな感じになるのでは…と(根拠はありませんが)考えております。

・注1
 映画は未見ですが、風間賢二・編「フランケンシュタインの子供」(角川ホラー文庫/1995年1月10日初版発行)に収録された、ジョン・L・ボルダーストーン&ウィリアム・ハールバット「フランケンシュタインの花嫁」(映画のノベライゼーション)にて内容を知りました。

2016年10月28日 ページ作成・執筆

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