尾崎みつお「妖女マリーネ」(1975年7月31日発行)

「十五歳の平野恵子は、病院の医師を勤める兄、哲雄と二人暮らし。
 兄の仕事の都合で、東京から清丘市という田舎町に移る。
 いつ頃からか、彼女の兄は夜中にどこかに出かけるようになり、それと共に、徐々に衰弱していく。
 だが、恵子がいくら兄に尋ねても、彼は決して理由を明かそうとしない。
 兄の同僚の川崎に恵子が相談すると、清丘病という風土病かもしれないと言われる。
 清丘病は、戦前、この一帯で猛威を振るった奇病で、患者は体内の血がどんどん少なりなり、失血死してしまうというものであった。
 ある夜、恵子は兄の後をつける。
 兄の姿を墓地で見失ってしまうが、雷雨に襲われ、仕方なく、恵子は帰宅する。
 兄を待ちながら、恵子が自室で悶々としていると、突如、金髪の美しい女吸血鬼に襲われる。
 恵子は気を失うが、電話音で吸血鬼は退散。
 恵子が気付くと、家には川崎の姿があった。
 また、墓地で発見された哲雄は、一晩中、嵐にさらされ、危険な状態となる。
 川崎は哲雄のうわごとに「マリーネ」という言葉を耳にして、それが哲雄が前に倒れていた墓石に刻まれた名前であることに思い当たる。
 川崎は、オカルティズムに造詣の深い、大学時代の恩師、中田博士に調査を依頼。
 中田博士は聞き込みや調査を重ね、「マリーネ」が清丘病と関連があることを突き止める。
 超心理学者の源隼人にも協力を仰ぎ、彼らはマリーネから哲雄を守ろうとする。
 マリーネの正体とは…?」

 典型的な「吸血鬼もの」かと思いきや、ラヴクラフトの「クトゥルー神話」を導入している意欲作です。
 作品に出てくる「ウェトリー家」は、もしかしたら、「ダンウィッチの怪」から採ったものでしょう。(p114の台詞も「ダンウィッチの怪」の冒頭の引用文と若干、重なります。)
 ですが、「クトゥルー神話」の要素はほんの味付け程度で、内容はやっぱり、典型的な「吸血鬼もの」だったりします。
 作品としては、内容も作画もしっかりしていて良質な作品と思いますが、女性キャラがイマイチ肌に合わないのが、個人的にネック。(単なる好みの問題です。)
 劇画ちっくな絵柄は別にかまわないのですが、どうも色気に欠けているかと…。
 ただ、女吸血鬼とのセックスを思わせるシーン(p141、pp143〜145)があったのには驚かされました。

 ヒバリ・ヒット・コミックスにて「女吸血鬼マリーネ」と改題されて再刊されておりますが、未入手のため、詳細はわかりません。

2018年2月28日 ページ作成・執筆

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