大石まどか「怪談お糸地獄」(1973年5月30日発行)

「お岩と民谷伊右衛門の間にできた一人娘、お糸。
 あの悲劇の後、お糸はある寺に預けられ、宅悦という僧侶によって育てられた。
 年も大きくは隔たっていない二人は、実の兄妹のように、慕い合っていた。
 しかし、お糸は、父伊右衛門の汚血と母お岩の怨念を受け継ぐ身、その生涯には不吉な災いがついてまわる。
 そこで、お糸がまた幼い頃に、宅悦の師匠の僧侶は、厄除けのための数珠をつくり、死の間際に、それを子坊主であった宅悦に託す。
 お糸がものの善悪がわかる年頃になった時、お糸の両親について全てを話し、その数珠を渡すよう、宅悦は言い渡されていたのであった。
 時は過ぎ、お糸は十四歳、平穏な日々が破られる時がくる。
 お糸が裁縫教室に通う際、伊藤源太郎という同じ年の青年と知り合い、二人は互いに惹かれ合うようになる。
 伊藤源太郎はまじめで親切な青年であったが、彼には奇病があった。
 何の前触れもなく、突如凶暴になり、一暴れした後、猛烈な震えに襲われると昏睡、眠りから覚めると、何も覚えていないのであった。
 実は、源太郎は、民谷伊右衛門をお岩から奪った伊藤喜兵衛の娘、お梅と伊右衛門の間にできた男児であった。
 伊右衛門が伊藤喜兵衛夫婦を斬殺し、屋敷に火をつけた時、お梅はかろうじて助け出されたが、そのお梅は伊右衛門の子をみごもっていた。
 お梅は源太郎を出産後、死去。
 そう、源太郎には、民谷伊右衛門の呪わしい血が流れていたのであった。
 源太郎とお糸が愛し合っていることを知った宅悦は、二人の交際を決して許さず、以後、外出を厳禁。
 一方の源太郎は発作を起こした際に、養父を斬殺。
 追われる身となった源太郎は、お糸の暮らす寺に行き、お糸に駆け落ちを持ち掛ける。
 お糸は、数珠を身につけ、源太郎とともに、逃亡の旅に出ることになるのだった…」

「お岩の怪談」の後日譚であります。
 ちっとも印象に残っていなかったのですが、改めて読みなおすと、面白かったです。
 良質な作品だと思いますが、怪奇色が非常に薄いので、チビっ子達には物足りなかったかも…。
(とは言え、猫を虐殺するシーンや、カラスの大群に襲われて突き殺されるシーンはなかなかグロでありますが。)
 この作品は「お岩の怪談」とのセットで読んだ方が、趣が倍増いたします。
 非常に絵柄が美しく、個人的には、名品と思います。

・備考
 貸本。カバーに折れ痕、剥がれ痕、背表紙裏に補修あり。ホッチキスのようなものでの綴じあり。後ろの遊び紙に押印あり。

2016年1月19日 ページ作成・執筆

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